撮影上達に立ちはだかる三つの壁
一般的に、写真の三要素といえば「構図・シャッターチャンス・明るさ(露出)」だろう。しかし、スタジオでストロボを使ってスティルライフフォト(静物写真)を指導していると、初心者が苦手に感じる“実践的な三つの要素”が見えてくる。
それは「ネジ」「お風呂」「色」だ。
「ネジ」と「お風呂」と聞くと、写真と関係がないように思われるかもしれない。だが、この三つこそが、実習の現場で多くの受講生がつまずくポイントのような気がしてならない。
そして「色」はホワイトバランス(WB)の設定のことだが、話が長くなりそうなので今回は「ネジ」と「お風呂」について述べたい。
まず「ネジ」について。これは三脚操作のことだ。
ハイテクの塊であるカメラに対し、三脚は極めてシンプルな構造をしている。突き詰めれば「締めるか、緩めるか」だけの世界だ。しかし、この操作に苦労する人が非常に多い。
実習の様子を見れば、普段から三脚に触れていない人は一目瞭然だ。工業製品のネジの締め緩めの方向は基本的に共通している。つまり、これは慣れの問題である。
撮影の場数だけでなく、日常生活の中でも経験は積める。ドライバーでネジを締めて家具のぐらつきを直すということは誰にでもあるだろう。この経験は作品展示時の額装作業でも同じことがいえる。締めが甘ければ外れるし、強すぎればネジ山や金具を傷める。
そうした普段の些細な行動にも注意を払うことが、そのまま撮影技術に繋がる。
中には実習中に三脚の設置だけで10分以上費やしてしまう受講生もいる。最初は手助けするが、最終的には自分の身体で覚えなければならない。現場以外でも触れて慣れることが重要だ。
また、カメラが不用意に傾くことを恐れて雲台のネジを力任せに締めるのもよくない。自由雲台には重量に応じてテンション調整(トルク調整、またはフリクションコントロール)ができるものもあるが、ネジが増えることで混乱する方も見受けられる。
慣れない方はせめて撮影の前日に雲台に触れて、扱い方を再確認しておいていただきたい。

そして2つ目のキーワード「お風呂」。一見、写真とは無関係に思えるかもしれない。
しかしこれは、露出の理解に関する例え話だ。
露出は「絞り・シャッタースピード・ISO感度」の三要素で決まる。これをお風呂に例えると、
ISO感度=浴槽の大きさ
絞り=蛇口の口径(開き具合)
シャッタースピード=お湯を出す時間
この三つで「適正露出になる=お湯が溜まる」と考える。
おそらくここまでは多くの人が理解できている。問題はストロボを使い始めたときに起きる。
通常のカメラでは、ストロボ使用時のシャッタースピードには上限(同調速度)があり、一般的には1/250秒前後だ。それ以上速くすると、シャッター幕が写り込んでしまう。
つまりこの場合、露出を決める要素は
シャッタースピード→ストロボの光量
に置き換わる。
ここで頭を切り替えられず、シャッタースピードで調整しようとして混乱する人が目立つ。
もちろん、わざとシャッタースピードを遅くして環境光とミックスし、軌跡や色の重なりを表現する方法もある。しかし、それは応用の話だ。まずは基本を正しく理解することが重要である。
そして撮影素子(センサー)に必要な光を浴びせて、写真画像を生成する意識を持つということ。
今ではあまりに便利になりすぎて植え付けられてしまった、「機械のスイッチを入れたら自動的に写真が出来上がる」という感覚から離れてもらいたい。

結局のところ、「ネジ」も「お風呂」も同じ結論に行き着く。
それは、経験と慣れに勝るものはないということだ。
Abox Photo Academyでは、コマーシャル講座を月2回、それ以外は月1回のペースで授業を行っているが、授業の時間だけで上達することは難しい。日常的に撮影を重ねることが不可欠だ。
写真愛好家から写真家へステップアップするには、相応の努力が必要になる。
それは避けて通れない壁であり、同時に乗り越える価値のある壁でもある。
機会があれば、残り一つの壁、「色」についても触れてみたいと思う。
露出を感覚ではなく、自分の基準で扱えるようになりたい方へ。Aboxの「写真愛好家から写真家への4つのSTEP」では、My Exposure Chartを作りながら、再現できる撮影の土台を整えていきます。




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