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今日から憧れるのはやめにしよう

  • 執筆者の写真: 松龍
    松龍
  • 3月13日
  • 読了時間: 5分

 展覧会に行く。有名な作家の作品を見る。圧倒される。すごい、と思う。その感覚はとても大切だけど、そこで満足してしまうと、いつまでも自分は「観る側」のままになる。今日から、憧れるのはやめにしよう。もちろん、尊敬しなくていいという意味ではない。大切なのは、ただ見上げるだけの距離感をやめることだ。


アーティストになるのに、資格も試験もいらない

 あなたがアーティストになるのに、資格はいらない。試験もない。誰かに認定されて初めて表現者になるわけでもない。作品を作り、世界に向けて差し出そうとするなら、その時点で、もう舞台には立っている。過去の偉大な画家や音楽家たちも、最初から「巨匠」だったわけではない。ただ、自分の表現を世に置いた。その連続が、いま私たちが見ている歴史になっている。

 だから、展覧会に行くときの見方も変えたい。「すごい作品を観に行く」のではなく、自分が展示する立場なら、この展覧会から何を学ぶかという目線でも見る。


展覧会は「鑑賞の場」ではなく「未来の自分の参考資料」になる

 展覧会は、作品が並んでいるだけの場所ではない。ひとつの空間体験として設計された、総合的な表現だ。


  • 会場の広さはどうか。

  • 作品はどんな順番で並んでいるか。

  • 高さはどう決められているか。

  • 作品同士の距離は近いのか、遠いのか。

  • 額装か、パネルか、直貼りか。

  • 固定方法はどうしているのか。

  • キャプションの文字量は多いのか、少ないのか。

  • 会場案内はわかりやすいか。

  • 音声ガイドは必要だったか。

  • ショップには何が置かれ、どこまで世界観が貫かれているか。


 ここまで見えてくると、展覧会は「鑑賞」から「リファレンス」に変わる。ただ感動して終わるのではなく、自分がいつか展示するための実地の学びとして受け取れるようになる。


憧れを分解すると、Styleの引き出しが増える

 ここで大切なのは、憧れをそのままにしないことだ。「あの展示、よかった」で終わらせない。何がよかったのか。なぜ引き込まれたのか。どの設計が効いていたのか。逆に、どこに違和感があったのか。どこは自分なら変えたいと思ったのか。そうやって言葉にしていくと、憧れは少しずつ輪郭を持ちはじめる。輪郭を持ったものは、やがて技術に変わる。技術に変わったものは、実践できる。

 これは、Aboxで大切にしている考え方そのものでもある。「いいと思った」で止まらず、「では、自分はどう作るのか」へ進むこと。


展覧会を自分事として見ると、次に学ぶべき課題が見えてくる

 展覧会を展示する側の目線で見ると、もうひとつ大きなことが起こる。それは、自分に足りないものが見えてくることだ。 

 作品は作れても、展示構成はまだ弱いかもしれない。プリントの知識が必要かもしれない。額装や搬入、照明、キャプション設計、DM制作、導線設計、告知、物販。作品の外側にあるものまで含めて、表現は成立している。そこに気づけたなら、それは前進だ。何を学べばいいのかが、初めて具体的になるからだ。

 憧れが、課題に変わる。課題が、行動に変わる。この変換が起きたとき、展覧会はあなたの制作を前に進める。



展評ノートの付け方|展示を見て終わりにしないために

 そのためにおすすめしたいのが、展評ノートをつけること

 大げさなものでなくていい。ポケットに入る野帳のようなノート。鉛筆。細部を見るためのミュージアムグラス。そしてスマホ。スマホは写真だけでなく、音声メモにも使える。

展示会場に着いたら、DM、チラシ、作品解説、会場マップなど、持ち帰れる紙類はできるだけ集めておく。それらは単なる配布物ではない。その展示が、自分たちの表現をどう社会に手渡そうとしているかの痕跡だ。


 会場では、気づいたことを短く残していく。

 入口の一作目が強い。余白が効いている。キャプションが少なくて作品に集中できる。順路が自然で迷わない。ショップまで含めて世界観が崩れていない。そんな断片でいい。むしろ断片のほうが、その場の感覚を生々しく残せる。

展評の作品展
展評ノートを作品化した

展評ノートは、帰宅後に整理して初めて資産になる

 そして帰宅したら、写真、音声、紙資料をひとつにまとめる。僕はNotionに整理しているけれど、方法は何でもいい。大事なのは、見て終わりにしないことだ。

 あとから取り出せる形にしておくと、未来の自分が助かる。展示を考えるとき。ステートメントを書くとき。DMを作るとき。物販を考えるとき。「あの展示のやり方が参考になる」と、過去の体験が具体的な引き出しとして使えるようになる。

これが積み上がると、展覧会は単なる教養消費ではなくなる。自分の作品を社会に届けるための現地調査になる。さらに書きためていくと、どんな作品展を見に行き、なには観なくてもいいという軸が自分でできる。これはとても強い!


展評ノートの付け方は、次回のArt講座 Advanced Classで講義予定

 なお、展評ノートの具体的な付け方については、次回のArt講座 Advanced Classで講義予定です。 ただメモを取るだけではなく、どこを観察し、どう記録し、どう自分の作品制作へ返していくのか。その流れまで含めて扱う予定です。「展覧会を見て終わってしまう」から一歩進んで、展示体験を自分の制作資産に変える方法を知りたい方には、ちょうどいい内容になるはずです。


自己表現しているあなたへ

憧れをリファレンスに変えよう

憧れは、出発点としては悪くない。むしろ必要だ。

でも、憧れのままで終わると、自分の手は動かない。

展覧会を見るなら、今日からは自分の未来の展示のために見る。作品だけでなく、空間、導線、言葉、伝え方、届け方まで含めて見る。その視点が、あなたのStyleの引き出しを増やし、実行のための課題を明らかにしてくれる。

今日から憧れるのはやめにしよう。そして、リファレンスしよう。観客としてではなく、いつか展示する側の人間として。




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