写真は、たくさん撮れば上手くなるのか?

― 写真と筋トレの意外な共通点 ―
「写真は、たくさん撮れば上手くなる」
写真を学んでいると、よく耳にする言葉です。
これは間違いではありません。写真もスポーツと同じように、繰り返し実践することで身につく能力がたくさんあります。
しかし、闇雲に撮影枚数を増やせば、自分が目指している写真家になれるのでしょうか。
明確な目的を持たずに撮影を重ねるだけで、自分の目指す姿へ着実に近づける人は、そう多くないでしょう。
中には、何をすべきかを言語化しなくても、身体的な感覚で理解し、自ら成長していく人がいます。私は、そうした能力を一種の「センス」だと考えています。
本人にも、なぜそれができるのか、他人にうまく説明できない場合があります。
しかし、誰もがそのセンスを持っているわけではありません。
だからこそ、成長するための方法を言語化し、誰もが実践できるようにすることに意味があるのです。

オリンピックで金メダルを取るための筋トレ
例えば、あなたがオリンピックで金メダルを目指すアスリートだったとします。
まず、何をするでしょうか。
いきなりジムに行って、ひたすら筋トレを始めるでしょうか。
おそらく違うはずです。
まず、どの競技で金メダルを目指すのかを決める。
100m走なのか、マラソンなのか、体操なのか。
競技が決まれば、そこで求められるパフォーマンスを考えます。
そのパフォーマンスを実現するには、どのような身体能力が必要なのか。どの筋肉を、どのように鍛えるべきなのか。
さらに、自分の身体的な特徴や、得意な能力、弱い能力を見極めます。
その上で、ようやく自分に合ったトレーニングメニューを組み立てる。
100m走の選手とマラソン選手では、求められる身体能力も、トレーニングの方法も違います。
大切なのは、ただ筋肉を鍛えることではありません。
目指す競技に必要な能力を、意図して獲得することです。
写真も、まったく同じではないでしょうか。
写真家を目指す人が、毎日100枚の写真を撮ったとします。
一か月で約3,000枚。一年では約36,500枚になります。
それだけ撮影すれば、カメラの操作には慣れるでしょう。被写体への反応も速くなるかもしれません。
しかし、その人は何をできるようになったのでしょうか。
何のために撮影していたのでしょうか。
例えば、人物の内面を表現したい写真家であれば、人との距離、視線、表情、光、コミュニケーションを学ぶ必要があるかもしれません。
日常に潜む違和感を作品にしたいのであれば、観察力だけでなく、違和感を発見して問いに変える能力が必要かもしれません。
さらに、自分の問いを写真作品として鑑賞者に届けたいのであれば、作品を構想し、シリーズを編集し、展示空間を設計する能力も必要になります。
撮影技術は、写真家に必要な能力の一部分でしかありません。
写真家が鍛えるべき「筋肉」とは
Abox Photo Academyでは、写真作品を作るために必要な能力を、撮影技術だけに限定していません。
例えば、
自分の経験や違和感から、問いを発見する力
その問いを体現するMotifを見つける力
先人の作品を研究し、自分の表現に接続する力
自分の意図を写真として実現する撮影・制作技術
作品をシリーズとして編集する力
鑑賞者の体験を設計する力
作品を発表し、反応を受けて改善する力
こうした能力も、写真家としての大切な「筋肉」です。
もちろん、すべてを一度に鍛える必要はありません。
自分が作りたい作品、自分が目指す姿によって、優先すべき能力は違います。
大切なのは、自分にとって何が必要なのかを見極めることです。


目標を決め、現在地を知り、トレーニングを設計する
Aboxでは、この考え方を整理するために、Artist Navigation Methodという3つのフレームワークを用意しています。
Artist Growth Compass|コンパス
作品を通じて、鑑賞者や社会にどんな変化を起こしたいのか。
そのImpactから逆算して、必要な鑑賞体験(Experience)、制作物(Creation)、能力(Capability)を考えます。
つまり、自分はどこを目指し、そのために何が必要なのかを明確にするためのコンパスです。
Artist Literacy Map|地図
写真家に必要な能力の全体像を捉え、自分が今どこにいるのかを把握します。
何ができていて、何が不足しているのか。
目標と現在地の差を知ることで、次に伸ばすべき能力が見えてきます。
Artist's PentaGuide|設計図
作品の中心となるCoreは、次の3つから構成されます。
Personal Reason:自分がその問いを持つに至った理由。生い立ち、経験、記憶、価値観、違和感など。
Theme:作家が鑑賞者に提示したい問い。
Motif:その問いを体現するための箱。
このCoreを鑑賞者に届けるための制作の仕様・規範・哲学がRuleであり、それによって生み出された作品を展示し、鑑賞者が受け取る体験がStyleです。
PentaGuideは、作品を構想し、制作するための設計図です。
その設計図を描くことで、作品を実現するために自分が何をできるようになる必要があるのかも、具体的になってきます。
この3つのフレームワークを活用しながら、自分に必要なトレーニングを考えるのです。
これは、あなた専用のトレーニングメニューを設計することでもあります。
そして、実際に撮影し、作品を作り、発表して、振り返る。
その結果から、次に鍛えるべき能力を見極める。
この繰り返しが、写真家としての成長につながります。
同じ1000枚でも、意味は違う
明確な目的を持たずに撮影した1000枚と、具体的な課題を持って撮影した1000枚。
どちらにも発見はあります。
例えば、「光によって人物の印象がどう変わるのか」という課題を設定したとします。
光の方向や硬さ、距離を変えながら撮影する。
撮影した写真を並べ、比較する。
どの光が、どのような印象を生み出したのかを考える。
そして、次の撮影で検証する。
これを繰り返すことで、自分の表現に必要な光を判断し、選択する能力を鍛えられます。
重要なのは、目的を持って撮影することだけではありません。
撮影した結果を比較・検証し、次の撮影に反映することです。
もちろん、偶然の発見や、目的を持たずに撮る楽しさを否定しているわけではありません。
むしろ、思いがけない発見が、次の作品の出発点になることもあります。
その発見から新しい問いが生まれ、目標そのものが変わることもあるでしょう。
大切なのは、発見したものをそのまま消費せず、自分の次の成長につなげていくことです。

ところで、アートとスポーツには決定的な違いがある
オリンピックのアスリートには、すでに競技種目と競技ルールが用意されています。
しかし、アーティストは違います。
自分自身で、まだ存在しない競技を発明することさえできるのです。
既存の写真ジャンルで誰よりも上手くなることだけが、写真家の目標ではありません。
自分自身の経験から生まれた問いを、独自の方法で表現し、これまでになかった鑑賞体験を生み出すこともできる。
そして、そのために必要な能力を、自分で考えて鍛えていく。
既存の競技で優秀な成績を収めることと、新しい競技そのものを発明すること。
この違いは、とても大きいと思います。
アーティストは、何を目指すのかという目標そのものを、自ら問い直すことができるのです。
私は、それが写真家として作品を作り続けることの面白さだと思っています。
写真を学ぶことで、手に入れてほしいもう一つの能力
ここまで、写真と筋トレの関係についてお話ししてきました。
しかし、私がAbox Photo Academyで伝えたいのは、単に写真が上手くなる方法だけではありません。
自分に必要な成長を、自分自身で設計し、実行できるようになること。
これこそ、写真を学ぶことで手に入れてほしい、もう一つの能力です。
目標を決める。
その目標を実現するために必要な能力を考える。
自分の現在地を把握し、足りない能力を見極める。
トレーニングを設計して実践し、成果を検証する。
そして、必要に応じて目標やトレーニングそのものを見直す。
この一連のプロセスを自律的に実行できるようになったとき、あなたは写真家として成長する方法を自分のものにしています。
そして、この能力は写真だけに使うものではありません。
ビジネスで新しい事業に挑戦するときも、未知の技術を習得するときも、これまで経験したことのない領域へ踏み出すときも、同じ考え方を応用できます。
例えばビジネスなら、「売上を増やすにはどうすればよいか」と考えるだけでなく、「そもそも自分たちは、顧客にどんな価値を提供する存在なのか」と問い直すこともできるでしょう。
もちろん、新しい領域には、新しい専門知識や経験が必要です。
しかし、何を学び、何を鍛え、どう実践すればよいのかを、自分で考えられるようになる。
これは、人生のさまざまな場面で役に立つはずです。
写真を学ぶことを通して、自分自身を育てる方法を学ぶ。
私は、それもAbox Photo Academyが提供したい教育価値だと考えています。
あなたは、何の金メダルを目指して、今日シャッターを切るのか。
写真を1000枚撮る前に、一度考えてみてください。
その1000枚は、自分の何を鍛えるための1000枚なのか。
目指す姿が違えば、必要な能力も違います。
必要な能力が違えば、練習方法も違います。
撮影枚数は練習量であって、成長の尺度ではありません。
大切なのは、自分が何をできるようになったのか。
そして、それを自分自身で考え、実行できるようになることです。
オリンピック選手は、競技が変わればトレーニングを変えます。
アーティストは、時には自分自身で新しい競技を発明します。
新しい競技に挑むたびに、自分に必要な能力を見極め、鍛えていく。
写真の撮り方を教えるだけではなく、自分の成長の仕方を学ぶ。
それが、Aboxの目指す写真教育です。
写真家になるための、最初の4STEP
自分がどんな写真家になりたいのか。
今の自分には、どんな能力が必要なのか。
そして、何を、どのように学び、実践していけばよいのか。
Abox Atelier 4STEPは、写真愛好家から写真家になるための考え方と、作品制作の基本的なプロセスを4回で学ぶ講座です。
あなた自身の「写真家になるための設計図」を、一緒に考えてみませんか。
すでに作品制作に取り組んでいる方には、作品シリーズの完成や作家活動を目指すArt Courseも用意しています。
Abox Photo Academy|写真愛好家から、自ら問いを立てる写真家へ




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