top of page

怪獣と呼ぶ前に|松龍 個展・伊勢宮町ホテル|Abox Photo Academy

Abox Photo Academy
2 日前
読了時間: 5分

三重県伊勢市の伊勢宮町ホテルにて、松龍の個展「怪獣と呼ぶ前に|Before Calling It a Monster」 を開催します。


松龍 個展「怪獣と呼ぶ前に」伊勢宮町ホテル 展覧会DM
怪獣と呼ぶ前にDM

 今回の展覧会は、ひとつの問いから始まります。

 もし、変わらなかったものがすべて見えなくなったら、世界はどのように見えるだろう。

 私たちは日常の中で、多くのものを見ています。けれど実際には、「変化したもの」には強く反応しても、「変わらずそこにあり続けるもの」は、次第に背景へと退いていきます。

 見るという行為は、単に目の前にあるものを受け取ることではありません。何かを選び、何かを見落とし、何かを意味のあるものとして区別する行為でもあります。

 今回の展示では、その「見る」という行為そのものを、いくつかの異なる作品を通して考えます。



《499 seconds》

 《499 seconds》は、時間の中で起こった変化を扱う作品です。

 同じ場所を時間をおいて撮影した複数のイメージから、変化した部分だけを抽出することで、普段とは異なる世界の見え方を立ち上げています。

 そこでは、建物や地面のように変化しなかったものは消え、人の移動や光の変化など、時間の中で動いたものだけが残ります。

 普段の私たちは、動かないものを世界の「背景」として扱っています。しかし、その背景を消してみると、世界はまったく違った構造として現れます。

 写真は、そこにあるものを記録するだけのものなのか。それとも、何を見せ、何を消すかによって、世界の認識そのものを組み替えることができるのか。

 《499 seconds》は、その問いを投げかけます。




《ハマロカリスの休日》

 一方、《ハマロカリスの休日》には、都市の中に突然、異質な存在が現れます。

 巨大な生き物のようにも見えるその存在は、人々を襲うわけでも、街を破壊するわけでもありません。


ただ、そこにいる。

そして、街を見ている。


 私たちは、それだけでその存在を「異物」と感じます。

 人間の尺度から外れたもの。理解できないもの。名前をつけられないもの。

 そうした存在に出会ったとき、私たちはしばしば、それを自分たちとは異なるものとして分類します。


 安全なものか、危険なものか。味方か、敵か。内側か、外側か。

 そして、ときに名前を与えることで、その存在を理解したつもりになります。


 《499 seconds》が「私たちは何を見ているのか」を問い、《ハマロカリスの休日》は「見えたものを、私たちはどのように分け、名づけるのか」を問いかけます。

 二つの作品は、異なる方法を取りながら、同じ「認識」の問題へとつながっています。



「怪獣と呼ぶ前に」

 今回の展覧会タイトル「怪獣と呼ぶ前に」は、そこから生まれました。

 ある存在を「怪獣」と呼んだ瞬間、私たちはその存在を見る前に、その名前を通して理解し始めます。


 怖いもの。排除すべきもの。倒すべきもの。

 しかし、その名前を与える前には、その存在はまだ、別の可能性を持っていたはずです。

 私たちは、何を見て「異なる」と判断するのか。どこで境界を引くのか。そして、その境界の外側に置いたものを、どのように呼ぶのか。


今回の展示では、

SEE見るとは何か。

DIVIDEどこに境界を引くのか。

CO-EXIST異なる存在と共に在ることはできるのか。

という3つの問いを、展示全体を通して提示します。



伊勢宮町ホテルとのご縁

 今回の展覧会には、伊勢宮町ホテルとの以前からのご縁があります。

 伊勢宮町ホテルは、伊勢宮町にあった歯科医院をリノベーションして生まれたアートホテルです。

 ホテルの立ち上げにあたり、新進気鋭の作家を公募し、それぞれの客室に一人の作家の世界を展開するという構想でスタートしました。

 さらに、それぞれの客室には「時間」と「光」に由来する個性があります。

 一年の始まりとされる冬至の日、太陽の光と影が白い椅子に映し出される様子を1時間ごとに撮影し、そのとき椅子を照らしていた光の色を、それぞれの客室のコンセプトカラーとしています。

 そして、各客室の番号は、その光を撮影した時間を表しています。

 一般的なホテルでは、宿泊日、人数、ベッドタイプなどを選んで部屋を予約します。

 しかし伊勢宮町ホテルでは、「どの部屋に泊まるか」そのものを選ぶことができます。

 それぞれの部屋には異なる作家の作品があり、宿泊者は、ひとつの作品世界の中で時間を過ごします。


 松龍も、このホテルの作家公募に応募し、採用されました。

 現在、松龍の作品が展示されている客室はこちらです。


 通常、この作品を見るためには、その部屋に宿泊する必要があります。

 しかし今回は、ホテル1階のロビー・カフェスペースを使って個展「怪獣と呼ぶ前に|Before Calling It a Monster」を開催します。


 そのため今回は、宿泊者だけでなく、どなたでも無料で作品をご覧いただけます。

 客室という個人的な空間から始まった伊勢宮町ホテルとの関係が、今回はロビーという開かれた場所での展覧会へと広がります。



伊勢という場所で

 今回の展示では、横浜で生まれた《ハマロカリスの休日》とともに、伊勢で撮影した新作も展示します。


 横浜という都市の中に現れた架空の存在と、長い時間の中で多様な存在を受け入れてきた伊勢という土地。その二つを同じ空間に置くことで、作品の意味も少し変わって見えてくるかもしれません。


 展示を見る人それぞれが、自分自身の「見る」という行為について考えるきっかけになればと思います。


 写真を見る展覧会であると同時に、


 自分は何を見て、何を見ていないのか。何を分け、何を同じ側に置いているのか。


そんな問いを持ち帰ってもらえる展示になればと思います。



展覧会情報

松龍 個展「怪獣と呼ぶ前に|Before Calling It a Monster」

会場:伊勢宮町ホテル 1F ロビー・カフェスペース観覧無料

展覧会の詳細はこちら

コメント


bottom of page