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情熱だけではダメだった。写真が「作品」に変わる、心に刺さる5つの思考法

  • 執筆者の写真: 松龍
    松龍
  • 10月31日
  • 読了時間: 6分

更新日:11月2日

 情熱だけではダメだった。写真が「作品」に変わる、心に刺さる5つの思考法

ただシャッターを切るだけの日々から、一歩踏み出したい。自分の撮った写真が、単なる「記録」ではなく、誰かの心に深く、そして長く残り続ける「作品」になってほしい。そう願う写真家は少なくないでしょう。では、なぜある写真は一瞬で忘れられ、ある写真はいつまでも記憶に残り続けるのでしょうか?


 その違いは、情熱の量だけでは決まりません。心に刺さる作品を生み出す写真家は、情熱を土台としながらも、その上に極めて論理的で構造的な「思考法」を築いています。それは、感覚だけに頼るのではなく、作品の強度を意識的に構築するプロセスです。


 この記事では、Abox Photo Academyの「Stepup Class」で語られる、あなたの写真を「作品」へと昇華させるための5つの思考法をご紹介します。この思考法を手にすることで、あなたの創作活動は、より深く、確かなものに変わっていくはずです。


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1. 思考法1:情熱を超える「作家道」を持つ

 「この写真が好きだ」という情熱は、創作の出発点として不可欠です。しかし、それだけでは安定して強度のある作品を生み出し続けることはできません。そこで必要になるのが、規律ある実践としての「作家道」です。


 作家道とは、単なる精神論ではなく、**「1. 構想する」「2. 形にする」「3. プレゼンテーションする」**という3つの段階を能動的に繰り返す、 disciplinedなプロセスそのものを指します。一度きりの実践ではなく、このサイクルをPDCAのように回しながら、螺旋階段を上るように自らの表現を磨き上げていく。これこそが作家の歩むべき道です。


 強度のある作品をつくるための考え方を実践するのが真の作家であり、 情熱だけでは、継続的に強度のある作品は製作できない。


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2. 思考法2:作品の強度は「テーマ・モチーフ・リーズン」の三角地帯から生まれる

 作品の強度は、作家道の第一歩である「構想する」段階でその土台が築かれます。それは、「テーマ」「モチーフ」「パーソナル・リーズン」という3つの要素が交わる、最も密度の濃い地点から生まれます。


テーマ (Theme): あなたとこの世界との関係性を示すものです。それと同時に、過去の先人たちが到達した芸術の領域と、自分のテーマがどのような位置関係にあるのかを明確に意識することでもあります。


モチーフ (Motif): 設定したテーマやあなた自身の思いを代弁するために選ばれた、具体的な被写体です。そのモチーフに対して、どれだけ深い思慮、すなわち「造詣(ぞうけい)」があるかが問われます。


パーソナル・リーズン (Personal Reason): 「なぜ、あなたがそれを創るのか?」という作家中心の理由です。これは、**「その作品を制作する『貴方』は誰か」**という、自身の存在そのものへの問いに答える、最も根源的な動機となります。


 この3つの要素を深く掘り下げ、それらが強固に結びついたとき、作品は単に「見た目が良い写真」を超え、揺るぎないコンセプトを持つ骨太な作品へと変わるのです。



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3. 思考法3:「美しい写真」は消費される。目指すべきは「強度のある作品」

 多くの人が「美しい写真」を撮ることを目指しますが、美しさだけでは人の記憶に長くは留まりません。私たちが目指すべきなのは、「作品強度」の高い作品です。


 作品強度とは、美しさや心地よさといった感覚的な評価とは異なります。「観た人の心にどれだけ深く残るか」という度合いであり、その結果として2つの明確な効果をもたらします。ひとつは「記憶に長く残る」こと。そしてもうひとつは、鑑賞者を「何か具体的な行動へと繋げる」力です。


さらには、「美しさは消費されてしまう

 美しいだけの写真は、一瞬で心を掴むかもしれませんが、同じくらい早く忘れ去られてしまいます。真の作品は、消費されるのではなく、鑑賞者の心の中で生き続け、ときにはその人の人生を動かす力さえ持つのです。


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4. 思考法4:誰にも見せなければ、それは「作品」ではなく「練習」である

 どれだけ素晴らしい構想を練り、形にしたとしても、それが誰の目にも触れないのであれば、それは「作品」として完成したとは言えません。作家道の最終段階である「プレゼンテーション」を経て、鑑賞者が存在して初めて、あなたの写真は「作品」になるのです。


 誰一人にも見せないのであれば、それは作品ではなく、 [作業・練習]

作品を見せるためには、以下の要素を徹底的に考え抜く必要があります。 ステートメント、タイトル、媒体(プリント・画面、大きさ、マテリアル)、場所(ギャラリー・野外・スマホ、空間、光、音)、そして目的。


 特に重要なのが「目標設定」です。「作品を通して対話したい」「販売したい」「誰かに勇気を与えたい」など、何のために展示するのか。**自分なりの目的を必ず決めて、書き留めておくこと。**その覚悟が、プレゼンテーションのすべてに意味を与えます。


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5. 思考法5:あなたの作品のライバルは、隣の作家ではなく「競馬」かもしれない

 展示をする際、私たちはつい隣のブースにいる作家をライバルだと考えがちです。しかし、本当の競争相手は、もっと広い場所にいます。


 「Audience Journey(鑑賞者の旅)」を想像してみてください。鑑賞者は、あなたの展示会に行くか、映画を観るか、あるいは競馬に行くか、限られた時間とお金を何に使うかを選択しています。たとえ会場に来てくれたとしても、あなたの作品は、鑑賞者の頭の中にある「美味しい料理や素敵な異性や楽しそうな音楽」といった、他の魅力的な事柄と競合しているのです。


 ここでのゴールは、鑑賞者の脳内のポジションを勝ち取ること。具体的な時間軸で言えば、「瞬間認知(2秒)」から「短期記憶(5分)」へ、そして最終的には「長期記憶(1時間以上)」へと、あなたの作品を刻み込ませることです。そのためには、写真一枚の力だけでなく、空間全体を含めたトータルな体験を設計する視点が不可欠になります。


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結論

 心に刺さる写真作品を生み出すことは、単なる情熱や偶然の産物ではありません。それは、「作家道」という終わりのないプロセスに基づき、作品の「強度」を意識し、明確な意図を持って構想・制作・展示を繰り返していく、知的な実践です。


 これまであなたが撮ってきた写真は、素晴らしい「記録」かもしれません。しかし、今日ご紹介した5つの思考法を実践することで、それらは鑑賞者の記憶に残り、ときにはその人の人生に影響を与えるほどの力を持つ「作品」へと変わる可能性を秘めています。


 最後に、あなたに問いかけたいと思います。

あなたの作品は、誰の記憶に、どのように残りたいですか?


授業を受けて、一緒にこれらを具体的にあなたが、実践してゆきたい方は、体験会にお申込みください。

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