写真は「なんとなく」では成立しない。テーマとモチーフを「機能」させるための思考法
- Abox Photo Academy
- 11 分前
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こんにちは、松龍です。
日々、ファインダーを通して世界と向き合っている皆さんに、今日はひとつ問いを投げかけてみたいと思います。
「あなたが選んだその被写体(モチーフ)は、あなたの伝えたいこと(テーマ)を駆動させるための『部品』として、正しく機能していますか?」
「なんとなく良い雰囲気だから」「光が綺麗だったから」「それが好き」という理由でシャッターを切る段階を卒業し、一段上の「作家」としての表現を目指すために避けては通れない、テーマとモチーフの相関関係についてお話しします。

1. 「説明」と「表現」の決定的な違い
講評をしていると、よくこのような言葉を耳にします。 「今回のテーマは『静寂』です。だから、誰もいない夜の住宅街を撮りました」
これは間違いではありませんが、厳しい言い方をすれば、まだ「説明」の域を出ていません。テーマという抽象的な概念を、ただ具体的な記号に置き換えただけだからです。
私が皆さんに意識してほしいのは、単なる記号の配置ではなく、「そのモチーフが画面に存在することで、初めてテーマが観客の心に立ち上がる」という機能的な構造です。
2. モチーフはテーマを動かす「エンジン」である
テーマが「目的地」だとするなら、モチーフはそこへ観客を運ぶための「エンジン」でなければなりません。
例えば、テーマが「時間の残酷さ」だとしましょう。
機能していない例: 古びた時計をそのまま撮る。(単なる「時間の象徴」の提示)
機能している例: 広大な大地に夥しく咲いている「ひまわり」
後者の場合、モチーフである「ひまわり」は、観客の触覚に訴えかけ、「物事が損なわれていく痛み」を物理的な実感として想起させます。このとき、モチーフは単なる被写体であることを超え、テーマを増幅させるための「装置」として機能し始めているのです。
3. 「この被写体でなければならない」必然性を探る
優れた写真作品において、テーマとモチーフは切り離すことができない「機能的な相関」で結ばれています。
機能していない関係: 被写体を別のものに変えても、テーマが成立してしまう。
機能している関係: その被写体の、その切り取り方でなければ、テーマが死んでしまう。
皆さんに一度立ち止まって考えてほしいのは、「自分の写真からそのモチーフを抜き取ったとき、テーマは成立し続けるか?」という点です。もし他のもので代用がきくのであれば、それはまだモチーフに「仕事」をさせきれていない証拠かもしれません。
状態 | 表現の深度 | 観客への作用 |
Stage 1 | テーマとモチーフが噛み合っていない | 意図が伝わらない |
Stage 2 | モチーフがテーマを説明している | 「なるほど」という理解で終わる |
Stage 3 | モチーフがテーマを駆動させている | 「体験」として心に焼き付く |
4. 感覚を「機能」へと翻訳する
「好きだから撮る」という初期衝動は、作家にとって最も大切なエネルギー源です。しかし、それを「作品」へと昇華させるためには、一歩引いた視点からの論理的な構築(エンジニアリング)が不可欠です。
あなたが選んだその形、その色、その光。 それらは、あなたの内側にある「形のない問い」を、観客の脳裏に定着させるための「楔(くさび)」として研ぎ澄まされているでしょうか。
【今月の課題】 現在取り組んでいる作品のモチーフを、ひとつ書き出してみてください。 そして、それがあなたのテーマに対して「どんな役割(機能)を果たしているのか」を、言葉にしてみてください。
もし、その接続がうまく見えない、あるいは「機能」という言葉の意味を自分の作品にどう落とし込めばいいか悩んでいるなら、いつでも私にぶつけてください。その「回路」を一緒に点検し、より強固な表現へと磨き上げていきましょう。
今月のabox Photo academyのArt Courseはこのように、ThemeとMotifの相関性について、受講生と対話をすすめて、自分の相関を見いだすきっかけをつくるような授業になります。
(あとがき) 写真は、写ってしまうメディアだからこそ、「なぜこれを写すのか」という必然性の強さが、作家の強度に直結します。あなたのファインダー越しの眼差しが、単なる記録ではなく、確かな「機能」を持った表現になることを期待しています。



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