Abox展2025内「ハマロカリスの休日」作品発表のお知らせ
- 松龍

- 9月30日
- 読了時間: 4分
5億年の眠りから覚めた深海生物の視点で、現代横浜と「多様性」を問う

もし、5億年の時を超えて蘇った古代生物が、現代の横浜を歩いたら──その瞳には何が映るのでしょうか。作家・松龍(しょうりゅう)が、この大胆な問いを写真で表現する個展「ハマロカリスの休日」を2025年10月15日(水)から10月19日(日)まで横浜市民ギャラリーにて開催します。本展は、架空の深海生物「ハマロカリス」の視点を通して、私たち社会が「多様性」といかに向き合うかを鋭く問いかける、物語性の高い写真展です。
本展のコンセプト:物語の紹介
本展は、鑑賞者が単に風景写真を見るのではなく、ある特異な存在の「視点」を追体験する構成となっています。その独創的な物語設定は、私たちに日常の風景を新たな角度から見つめ直し、現代社会について深く思索するきっかけを与えてくれます。
ハマロカリスとは
物語の主人公である「ハマロカリス」は、数億年前に超低温・高圧の深海に生息していた生物です。光もほとんど届かない「限りなく漆黒に近い青」の世界で、極限まで代謝を抑えて生きていました。その特異な生態と能力は以下の通りです。
高度な認知能力: 競争相手が背景と一体化する環境で生き抜くため、極めて微妙でゆっくりとした変化を視覚情報として処理できる能力を獲得。
長い寿命: 代謝が極めて低いため、寿命は約500年と、現代の陸上生物より遥かに長い。
地殻変動により絶滅したと思われていましたが、一部がメタンハイドレートの中に凍結状態で保存されていました。
現代への再出現
物語は、現代の地政学的・環境的状況を背景に展開します。ロシアの天然ガスへの依存回避を目指す日本政府、アメリカ海洋資源庁、カナダ太平洋機構が共同で日本海溝の深海資源開発を推進。その最中、気候変動による海面上昇と深海圧力の異常上昇が重なり、掘削現場で岩盤層が崩壊します。これによりメタンハイドレート層が融解し、凍結保存されていたハマロカリスがメタンガスと共に現代の海中へ大量に放出されました。
知性の獲得と横浜への上陸
低代謝であったがゆえに海中で蘇生したハマロカリスは、東京湾の海面にまで浮上。細胞への減圧効果とメタンエネルギーによって進化が指数関数的に加速し、5億年の進化を一気に遂げ、陸上での活動能力とホモサピエンスと同等レベルの知能を獲得しました。
本写真展は、こうして現代に現れたハマロカリスが、横浜の象徴的な埠頭や歴史的建造物を巡り、新たな居住候補地として物色しているという設定で撮影された風景のコレクションです。このユニークな設定は、鑑賞者に「もし、自分たちとは全く異なる知性体が現れたら?」という問いを投げかけ、作家が込めた現代社会へのメッセージへと繋がっていきます。
作家のメッセージと現代社会への問いかけ
本展は、単なる空想の物語を描くだけでなく、現代社会が直面する根源的な課題に対する鋭い問いかけを内包しています。
作家・松龍は、インスピレーションの源として、自身の少年時代に影響を受けた特撮作品「ゴジラ」を挙げています。放射線という人間の科学が生み出した力によって変異した生命体が、人間社会に警鐘を鳴らす存在として現れる――本展はその構図を引用し、気候変動や資源開発といった現代的なテーマに置き換えています。作家は、人類の行動が引き起こした地球規模の危機(資源競争、環境破壊)そのものが、私たちが向き合わねばならない「他者」を生み出すという構造を示唆しています。
本展が鑑賞者に投げかける中心的な問いは、以下の言葉に集約されています。
「現在我々は、多様性を許容できるようになっているのか。それとも『ゴジラ』のように攻撃して排除するのか。あなたはどう思いますか。」
未知の存在、理解の範疇を超えた他者と対峙したとき、私たちはどのような選択をするのか。本展は、ハマロカリスの視点を通して、鑑賞者一人ひとりの価値観を静かに問いただします。この私たち自身の社会に向けられた挑戦こそが、「ハマロカリスの休日」を現代における重要な文化的試金石たらしめているのです。
作家プロフィール
作家・松龍(まつりゅう)。現代社会が抱える課題を、独創的な物語設定と写真表現を通じて探求するアーティスト。本展では企画から撮影まで全てを手掛ける。
開催概要
- 展覧会名: Abox展2025内 (ハマロカリスの休日)
- 会期: 2025年10月15日(水) ~ 2025年10月19日(日)
- 時間: 10:00~18:00 ※最終日のみ16:00まで
- 会場: 横浜市民ギャラリー B1
- 入場料: 無料
- 作家: 松龍
### 本件に関するお問い合わせ先
「ハマロカリスの休日」
担当者:松下龍士


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