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  • t.takasaki

その男は微笑んでいた。






僕は近くが見えない。


え、、、? と、誰もが訝しく思われることだろう。。

「プロカメラマンなのに。。」


でも、これは本当のこと。

20歳でこの業界に入ってアシスタントをしていた時のこと。テーブル上の物を取ろうとして遠近感を誤って利き手の親指を突き指した。


「なんで、こんなことに。。」


休みなんて取れる状況じゃなかったけど、(今だったらブラック企業って言われたんだろうな。)上司に無理言って眼科にも行かせてもらった。


診断の結果は遠視。

「もちろん、病気じゃないし、まだ眼鏡をかけっぱなしにする必要もないでしょう。」ということだったけれど、「老眼は早く来ると覚悟しておいてねと。」初老の医師の言葉。


「そうか、だから本読むの辛かったんだ~。もっと早く気づいていたら成績も上がってたんだろうな~。」と、どうでもいいことを考えながら、やり過ごしていた。


22歳でアシスタントからカメラマンに昇格した時、初めての眼鏡を作った。

やっぱり、細かい仕事になると見えにくいからだ。


見えにくいと言っても、撮影商品のジュエリーに付着した汚れや毛埃が見えにくい。という特殊な状況下での不都合だったので、久しぶりに訪れた眼科では世代交代した若い眼科医からも「日常では使わない方が良い」と言われた。


今ではその時に作った、度の強いメガネが日常使いになっている。


「目が見えないのに大丈夫なんですか?」と思われるだろう。

これが、全く大丈夫。


なぜなら、僕にはカメラがあるから。。


普段見えにくい極小の範囲の世界が、NIKONの接写用のレンズで覗けば、そこには想像もしなかった別世界が広がる。

いつも飲んでいるお酒のラベルを覗いてみたら、ここにも新しい発見があった。


多分、顕微鏡をのぞいている研究者達も、同じ気分なんじゃないかな。ワクワクが未だに抑えられない。


僕のような遠視(老眼)の方でなくても、カメラという魔法の箱を手にすることで新しい世界が生まれるという方は多いことだろう。


その経験がまだの方は、ぜひ、カメラという小箱を手にしてみてほしい。

きっと新しい世界が見えてくるはず。


いつも「カメラなんてただの箱だよ。」(a camera is just abox)と言っている僕だけど、実はその「ただの箱」って、とんでもない魔法の箱だっていうことを誰よりも信じている。


世界中が活動を抑え付けられているこの時代だからこそ、カメラで視野を開拓してみませんか。






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