先日、親しいアートディレクターから仕事の相談を受けた。ただし撮影ではなく、別のカメラマンが撮影した商品写真から、商品の部分だけを切り抜くレタッチの仕事。
僕の場合、広告の仕事では撮影に専念して、後の画像処理はプロのレタッチャーに委ねる。
特に新製品を扱う場合は情報保護の観点から、人件費の安い海外で作業する業者の手に任せず、長年付き合いのある情報管理に対しても信頼できるレタッチャーに依頼する。
僕はレタッチャーのH君の顔を思い浮かべながら「コロナ禍で時間はあるって聞いてたし、大丈夫でしょう。」と安易に受けたのだが、H君に話すと、「それ、本当に大丈夫なんでしょうかね?」を心配そうな声。
「まあ、一流メーカーの仕事だから変な写真は来ないと思うよ。」と僕はタカをくくっていたけど、送られてきたデータを見てため息が漏れてしまった。
通常、白背景で使われる切り抜き写真は白背景で撮らなければならない。だけど、手元に届いた写真は白い紙の上で撮られてはいるが、背景が光量不足でグレー背景になっていた。
商品に対しては、こなれた感じで光が当たっているものの「商品の切り抜き写真」という役割においてはちょっとまずい感じ。これによってどんな不具合が起こるかというと、、
・印刷紙面やWeb上で白地に入った時に商品の輪郭が溶け込んでしまう場合がある。
・影が出るので被写体の輪郭が判別できない。
つまり間違った撮影方法によって、商品の正しい視覚的情報を伝えることができなくなるわけだ。
そしてこれは商品撮影に限ったことではない。スタジオでのモデル撮影などにも共通する話。
今回は、なんとかH君に頑張ってもらって無事納品できたが、
「やはり今後は高崎さんが撮った写真だけを受けさせてください。」と言われてしまった。
彼もこれまでに「役割を満たしていない写真」に散々、悩まされてきたのだろう。
そう、プロとして活動しているカメラマンにもこのように仕事としての撮影の基礎が備わっていない人が結構いるのだ。
(おそらく美術大学、専門学校でも、そこまで専門的なことは教えてくれない。)
僕が講師を務めるAbox Photo Academyの「商品撮影講座 Stepupコース」では、いよいよ11月から新しく第4期がスタート。
まさに「商品撮影の種類と役割」「白い商品を撮る」についての解説からこの講座は始まる。
募集が始まったので、ご興味ある方は是非こちらのページをどうぞ。
https://www.a-box.jp/commercial-class-stepup
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