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アーティストは再現できない作品を、しかし広告写真家は時に再現性を求められる。


僕はコマーシャルカメラマンと写真作家の2つの顔を持つ。

「どっちも写真を撮る人でしょ。」と一緒くたに括られることが多いが、撮る時の気持ちとしては大きな違いがある。


・企業の製品やイメージを宣伝するための写真か、自己表現のための写真か。

・一瞬で引き寄せるものか、長く鑑賞できるものか?

・独りで作り上げていくか、チームの中で他人と協力して作り上げるか、

・会社からのメッセージを伝えるか、社会的メッセージを孕むか。


多様な切り口があるが、僕はもう一つ気付いたことがある。


それは、アートは再現できないものに大きな価値があるが、コマーシャルは時に再現性の技術を求められるということ。

(版画や写真のように同じ画像を複製できるかということを指しているのではない。)

アーティストは誰にも真似できない、時には自分でさえも再現できないワンチャンスを捉えることに価値が出ることがある。しかし、広告の現場ではある製品を撮影した1年後に、同じシリーズで商品のラインナップが増えることがあり、「前回と同じように撮ってください」と依頼されることがしばしば。

撮り足した製品が違和感なく並ぶように撮れなければならない。

答えを述べてしまうと、撮影で最も肝なるのはアングル。


つまり被写体を見る距離と角度。これが揃わないと違和感が生じるし、そもそもライティングを揃えることもできない。



慣れないと大きさを合わせるだけでも難しい。

フィルム時代には前回撮影したポジフィルムを大判カメラのファインダーに当てて、寸分違わない位置を探った。今はテザー撮影でPC上のオーバーレイ機能を使って画像を重ねてアングルを決める。


もちろん新しい製品でアングルを探すのではなく、過去に撮った製品を入手してアングルを決め、ようやく新製品を乗せ替えるという段取りになる。

カメラのバックモニターだけを見て、なんとなくアングルを合わせるなんて雑な仕事は論外。



Aboxの商品撮影講座は前身のTakasaki Seminar時代から数えるともう6年もやっているが、このアングル合わせだけで30分を費やす受講生もいる。それだけシビアなのだ。


僕はコマーシャルから写真の世界に入ったがアート作品を作るようになっても、こうした撮影の技術が邪魔になったことはない。

むしろ世の中のアート写真を見ていて、「アイデアはいいけど、撮影~印刷技術が稚拙だな。」と感じることが多い。




「商品撮影講座」は広告写真のための講座だが、アーティストや写真愛好家向けの「スティルライフ講座」というワークショップも過去に開催してきた。

コロナのせいでしばらく開催できないでいたが、再開してほしいという声が届くようになったきたので、現在オンラインで開講できる準備を進めているところだ。


まだまだコロナ収束という出口が見えず、気軽に外出できないが、こうした時期こそ室内でスティルライフに取り組んでみてはいかがだろうか。



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