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Abox Photo Academy

Abox People Vol.9「アートフォト講座 Advanced Plusコース」受講生 大塚栄二さん インタビュー

更新日:2023年3月29日



現在、福島県に在住の写真家 大塚栄二さん(アートフォト講座 Advanced Plusコース受講生)に Onlineでお話を伺いました。新作「ちょうぴらこ」のこと、そして来春からスタートする大塚さんが講師を務める講座「改めて写真の基礎を学ぶ講座 ~イメージ通りに写すために~ 」に込める思いを語っていただきました。



聞き手 Abox Photo Academy  塾長 高崎勉

講師  松龍


 

【新作のテーマ「ちょうぴらこ」って何?】

高崎:今月の授業(Advanced Plus)に、大塚さんはOnlineでご参加くださったわけですが、今日はその流れでzoomでお話を伺いたいと思います。


大塚:よろしくお願いします。


高崎:まずはAbox写真展(2021年2月)に向けての新作のお話から伺いたいと思うのですが、過去に撮られた家族写真からのセレクトで構成されたシリーズですよね。作品のテーマ「ちょうぴらこ」って何ぞや?っていうところからお聞かせいただけますか。


大塚:「ちょうぴらこ」って「座敷わらし」のことなんですが、座敷わらしと言ってもいろいろな種類、ランクがありまして、「ちょうぴらこ」って一番最上級の座敷わらしなんですね。


松龍:へえ~そうなんだ。知らなかった。


大塚:対して一番低級なのが「ノタバリコ」「ウスツキコ」などがいて、そいつらはイタズラばっかりしていくんですが、「ちょうぴらこ」ってその頂点にいて幸せとか富をもたらすって言われてるんです。

で、私が作品でイメージしているのは「幸せをもたらすもの」という意味での「ちょうぴらこ」なんです。


高崎:この時代に「ちょうぴらこ」をテーマにするというのは?


大塚:Aboxの中にも「Inside Journey」という、コロナ禍で何を表現するか?っていう講座がありましたし、同じクラスのritsuko matsushitaさんや山本瑛美さんが素晴らしい作品を発表なさろうとしている中で(※1)、私もコロナをテーマにした作品を考えても見たんですが、あえて自分がこのコロナ禍そのものを取り上げることはしなくていいのではと思ってしまったんですね。

でも、何ヶ月も東京の実家に帰れず1人暮しの母に会えない時期があって「当たり前のことができない。」となった時に、前から気になっていた「ちょうぴらこ」っていう存在とテーマが繋がったんですよ。


(※1 ritsuko matsushitaさんは2021年2月に、山本瑛美さんは2020年12月に個展を開催予定)


松龍:なるほど。


大塚:「ちょうぴらこ」をテーマにするというのは、いつも当たり前のようにそばにいるんだけど、それが離れていった時に大切な儚いものだったと気づく感じ、それを表現したかったんです。





作品「ちょうぴらこ」より




大塚:2年前に家族と住んでいる長野から単身赴任で福島に転勤したんですが、まだ長野にいた時から既に「ちょうぴらこ」をテーマにして作品を撮り始めてはいたんです。それが福島に移ってより身近になって、、、元々好きだった遠野物語(※2)の舞台の岩手まで実際に行って雰囲気を感じて、「ああ、これは今取り組むテーマとして間違ってなかったな。」と思いました。


※2遠野物語:岩手県遠野地方に伝わる逸話、伝承などを記した柳田国男が発表した説話集。



松龍:オンラインで「Inside Journey」っていうワークショップをやった時にも、大塚さんと同じ感覚を持った方が多いなと思って、、、コロナになって「日常って何?」とか「日々の幸せって何?」っていうのは、みなさん結構考えてた。

そこで大塚さんが自分にぴったりな単語として、前から使っていた単語だけど「ちょうぴらこ」っていうものが具体的なテーマとしてフッと上がってきたっていうのは、よくわかると思いましたね。


高崎:作品が生まれるまでのストーリーを聞かせていただいたんですが、テーマをこれでいこうと決めてから、何を撮るのか、何を選ぶのか、モチーフの選択などは?ということに関して聞かせていただけますか?


大塚:自分にとって「ちょうぴらこ」ってなんだろうって考えると、さっきは年老いた母のことを言いましたが、娘や息子の存在も大きかったんですよね。同じように随分長く会えない。

そして、さらに考えると私の父が4年前に亡くなったんですけど死に目に会えなかったんですね。最期は僕の名前を何度も呼んでいたそうで。それを思い出した時に、父にとっての「ちょうぴらこ」は自分だったのかなって。


作品「ちょうぴらこ」より




大塚:今お話ししたことはパーソナルな話なんですけど、見てくださる方にご自身のこととして受け止めてくださるんじゃないかと思っています。


松龍:自分の気持ちを吐露して、それが受け止められるかどうかというのは多分、世界中の表現者が、巨匠も駆け出しの人も皆んなが抱く悩みですよね。大塚さんがここで大きなチャレンジをしてその反応を受け止められるかということは、大塚さんの1ファンとしても楽しみですね。


大塚:今まではどちらかというと被写体が風景だったり、人だったり、わかりやすい作品が多かったように思うんですが、今回はもしかしたら一部の方には伝わりにくいものになるかもしれない。それでも皆さんにどうか感じてもらえるのかな?ということを現場で確かめたいと思っています。



作品「ちょうぴらこ」より




高崎:大塚さんはコロナ禍であっても状況を読み取って、行動可能な範囲で積極的に撮影なさっておられました。でも東北で撮ったシャボン玉の写真がありましたよね。それがきっかけでこのシリーズの構想が生まれたと同時に、作り込みが「撮影」から「セレクト~編集」へと大きくシフトしたように思います。


大塚:確かにそうですね。そもそも、新しく撮ろうと思っても、このテーマは撮り下ろせない。(笑)


高崎:そうですよね。まずそこが潔いなと感じたんです。大塚さんって元々、奇をてらうことはしない純粋な写真作家というイメージなんですが、実は誰よりも現代アートや写真以外の芸術にも関心を持たれている。今回のようにセレクトを中心に作品を構築するっていうのは、多方面に興味を抱く、普段の姿勢から生まれてくるように感じました。


大塚:元々写真をやる前から絵が好きで、大学生の頃から美術館にはよく観に行っていました。でも当時好きだったのは印象派までで、その後の時代はよく分かりませんでした。その先のアートに興味を持ったのは最近ですね。



高崎:大塚さんが東京で最後に作品展示されたのは昨年のAbox展でしょうか?


大塚:そうですね。


高崎:だとすると、今まで大塚さんの作品をご覧になった方は、良い意味で裏切られる作品になりそう。楽しみですね。


松龍:この先の中期的な目標ってありますか?


大塚:作りかけの作品がたくさんあって、どこに向かっていくかは迷っていますが、一旦、風景写真の方に舵を戻したいなっていうのはありますね。カメラの知識が豊富なので、それを生かした作品作りもやりたいし、自分が世界をどう見ているかっていうのをネイチャーの部分で表現したいです。








松龍:大塚さんはAboxが開校した当初からご参加いただいていますけど、その成果や自分が大きく変化したことなどありますか?


大塚:もともと、いろんな写真を撮ってはきたんですけど幅が広がりましたね。特に他のメンバーに刺激されることが大きくて。お互いの成長を見てきて突然変化するタイミングを感じたり、そこまで追い込むんだ。ここまでやって良いんだ。みたいなことを目の当たりにできることがすごく良かったですね。それがあったから今回の作品も生まれたと言えます。


高崎:さて、そんな大塚さんですが、満を持して、Aboxで講師をやっていただけるという。そして僕の手元にはその資料が揃っています。


大塚:そうですね。実は今年の春に企画していた講座が実習が中心の内容だったためにコロナで開催できなかったので(※3)今度はオンラインと現地参加の両方が可能な内容に再構築しました。


(※3 講座「光で画く~心の揺らぎを伝えるための写真術」のこと)


高崎:写真を教えることのきっかけとしては、何かあったんですか。


大塚:勤めている会社(光学機器メーカー)から「社内向けに写真の講師をやってくれないか」という話があって、授業の資料を作ったことがきっかけでした。

高崎:それも、ちらっと拝見したことがありますが、素晴らしい内容でしたね。


大塚:実際に会社で講座をやったら好評だったんです。最近のカメラは使い方がよくわかっていなくても写ってしまうので、そこをカメラメーカーに勤めている僕がしっかり掘り下げてもう一度基礎からしっかり学べる講座をやりたいと思うようになりました。


高崎:いまスケジュールを組んでいるのが、2021年4月から9月までの6回コース。会場は横浜のビートルビルですがオンラインの参加でもOKとなります。

(詳細は当ホームページに告知します)

どんな方に学びに来ていただきたいですか?


大塚:基礎を教えるんですけど、決して初心者だけに向けた講座とは思っていません。最初はカメラ任せで撮ることを楽しむ。でいいと思っているんですが、そのレベルが初心者だと思っていて、そこからさらに「思ったように撮りたい」となった時、オートだけでは限界がありますよね。そうした時にどうしたらいいのか。そこが意外とベテランの方でも基礎を知らないまま写真をやって発表しているんだな。と感じているんです。実は僕自身もそうだったので。ですからキャリアに関わらずご参加いただきたいですね。


高崎:今年開催できなかった講座「光で画く~心の揺らぎを伝えるための写真術」の話に戻しますが「光で画く」は、大塚さんの核となるもので昨年の個展のテーマでもありました。

光で画く(えがく)に「画」という字を当てている意味をお話いただけますか?


大塚:写真は「光画」って言われてたんですよね。そこから取った字です。


松龍:「photograph」という言葉が日本に入ってきた時、明治の人が「写真」と書いたけど、本来は「光画」と訳すべき。というところからなんですね。


大塚:そうです。その「光」の見方を学ぶための講座も時期を見てやりますが、それは長野ででしょうかね。


高崎:実は大塚さんは2022年に定年退職なさるご予定ですが、その後ご自宅のある長野で「Abox Photo Academy 長野校」をお任せしたいとお話を進めています。


大塚:実はこの間、長野の自宅に帰った時、場所の目星をつけてきたんです。


高崎:それは楽しみです。そちらも着々と進めていきましょう。来年はまだコロナの影響があると思われるので、まず感染防止を念頭に置いて横浜&東京校で可能な授業を重ねていきましょう。

まずは2月のAbox展、そして4月からの講座をよろしくお願いいたします。


大塚:はい、今日はありがとうございました。









 

大塚栄二プロフィール
















1961年鹿児島県川内市生まれ。

2歳の時に両親の移住で東京へ。大学卒業まで東京に住む。

22歳で精密機器メーカへ就職と同時に長野県へ。以来30年余りを長野で過ごす。

2018年5月に福島県へ転勤。

カメラ、顕微鏡、内視鏡の製造技術(製品をどう作るかを考える仕事)に従事。


カメラを造ることから次第に写真自体にも興味が広がり、現在では作品としての写真作りに活動の場を広げている。

また写真講座の講師も務め、最近では「光をどう見極めるか」をテーマに行ったワークショップ「光で画く」が好評を得る。


【主な展覧会、写真活動歴】

2016年 個展「ひーじゃーの島」(HoloHoloCafe)

2017年 JPCO展2017東京、京都(KyotoGraphieサテライト展示)

2018年 チームチャンピオンズカップ2018 優勝、最優秀写真家賞

2019年 個展「光で画く」(Space K 代官山)


【写真講座講師】

2018年8月~9月 EXA-Photoワークショップ「光で画く」第1期

2019年2月~4月 EXA-Photoワークショップ「光で画く」第2期


作品紹介Webサイト

https://www.eijiotsuka.com/

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