Abox People Vol.7
「Abox Photo Academy 写真展2019」招待作家 堂川嘉久さん & 粕谷千春さん インタビュー
2019.6/26~30に目黒区美術館区民ギャラリーにて「Abox Photo Academy 写真展2019」が開催されました。今回のAbox Peopleインタビューは富山校からの招待作家、堂川嘉久さん & 粕谷千春さんと一緒にAbox展2019を振り返りました。写真展の一週間後に富山校に講師として初めて招かれた松龍先生と、塾長高崎勉による富山市で行われた対談です。
聞き手:Abox Photo Academy 講師 松龍&高崎勉
取材協力:カフェ・ジャック ラビットスリムス https://www.facebook.com/cafejackrabbitslims/
【招待作家の心に残った作品】
高崎:まずは横浜校初となる「Abox Photo Academy 写真展2019」に招待作家として、作品をご提供くださいましてありがとうございました。
堂川&粕谷:こちらこそありがとうございまいた。
高崎:率直な感想を伺いたいんですが、いかがでしたか。
堂川:凄かったと思います。ステップアップ(中級)コースの方々は、まだこれから伸びるだろうなって感じでしたけど、、、、アドバンスト(上級)の方々の作品は本当に凄いと思いました。
高崎:印象に残った作品はありますか?「やっぱり自分のが一番良かった。」という意見でもいいのですが(笑)
堂川:ritsuko matsushitaさんですかね。。予備知識なしで会場で初めて作品を拝見したので。「なんだ、これは!」という衝撃から入っていって、だいたい分かってくると「どうやって撮ったのか?」って引き込まれて、、、ずう~っと見てました。
高崎:「どうやって」ていうのは手法のことですか?
堂川:そうですね。まずテクニカル的にどうやって撮られているのか?と。。
最初は本当に、ただ砂が撒かれて貼り付けられているのかな?って思ったんですが、よく見てみるとちゃんと写真になっている。砂の影ができているから不思議でしたね。
松龍:粕谷さんはいかがですか。印象に残った作品は?
粕谷:私もritsukoさんの作品なんですけど、最初見た時、「何がどうなってるの?」って。何を言いたいのか?っていうのがとても気になって、ステートメント読んで、「ああそういうことか」と、趣旨はわかったんですが、そういう発想になるっていうことがまず素晴らしいなと。私はどちらかというとコンセプトを探すのがまだ苦手で、スナップが多いので、撮ってから自分の気持ちを整理して考えようって思うんです。でもritsukoさんは最初からそれを考えられてて、、。ご本人からお話伺った時に「発想がどんどん出てくる」って仰ってましたね。そしてそれを形にしていかれる。。それがまさにアートっていうことなんですね。
松龍:そうだね。頭の中にある絵をどうやったら写真に仕上げていけるのか?っていうのを常に考えている。
粕谷:そこが私はまだ逆なので、アートっていうのはそういうことなんだ。って学ばせてもらいましたね。でもヨシさん(堂川さん)は、それができてると思いますよ。
【招待作家としての二人の作品】
堂川:自分も発想は豊富なんだけど。。やってみたいことはいっぱいあって。普通の写真を撮るにあたっても頭に最初に絵ができるんですよ。今回出展したポートレートの作品もそういうアプローチですね。で、現在進めている新作も実はもっと写真ぽく無くって、こういうことができたら面白いなって。。そういう形で始めているものが幾つかあります。
松龍:ああ、良いじゃないですか。さっきの授業でも話しましたけど、これからはもっとデジタル前提でいろんなものが混ざっていく。写真、ドローイング、音楽までもが一緒になっていく映像表現になっていく。写真っていうのがその一部として存在していくだろうって思うんです。で、頭に浮かんだ誰もやったことがないことを、どんどんやっていくっていうのは、楽しいはずですよね。
堂川:シャッター押している時間はたったの1/60秒程度ですよね。一旦写真を撮り始めてもせいぜい1時間とか短いんですが、そこに至るまで時間をかけて、ああやってみよう、こういう素材を集めてみよう、、ずう~っとそんなことばかり考えていますね。
松龍:まあ、アーティストですね。それは。
堂川:うまくいくかどうかは別なんですけど。
松龍:いいんですよ。それはそれで。その思考が大事なんですよね。
高崎:粕谷さんもAboxに通われるようになってから、テーマとかコンセプトとか、お考えになるようになったんじゃないですか?そんな風に最近の作品からは感じられるんだけど。
粕谷:それは確かに。ただ撮っているだけじゃなくて、考えながら撮るようにはなってきています。
堂川:すごく冷静になっているんですよ。他の方みたいに気が付いたら海の中にいたとか、ハイテンションで写真を撮るっていうことが全くなくて。ファインダー覗いてる時ってすごく冷静で、光がどうだとか、ピントはどうだとか、細かい箇所まで気にしながら写真撮っているっていう状況で、、だから、「わ~っ」てハイテンションで写真撮れる人が羨ましいんですよね。そういうのが味わったことがない。
松龍:だから作業の一環なんですよ。淡々とこなしていく。Taskとして存在しているっていう感じなんでしょうね。
堂川:そうですね。写真撮ってる時って高揚感がないんですよ。。
粕谷:うん、ヨシさんってそんな感じ。(笑)
高崎:でも、「良いの撮れた!」っていうときはあるんじゃないですか?
堂川:あるかもしれないけど、、それほどでは。(笑)
粕谷:逆に終わってから、PhotoshopやLightroomなんかで作業してる時の方が高揚感があるんじゃないですか?仕上げの段階で自分のイメージが完成に近づいていく時とか。
堂川:そうかもしれない。
高崎:目黒の会場でいろんな方がお越しになられましたけど、ご来廊くださった方との印象に残るやり取りとか、ありましたか?
堂川:この作品は昨年富山展で出したんですが、目黒でも富山でも言われることって大体同じでしたね。「まるで絵画のようですね。」っていうのが多かったです。「これは写真なんですか?」と。確かにこちらはそういうことも意識して撮ってるんですけどね。あとはそのプロセス的な、、どうしてこれを撮ろうと思ったか?というところから含めてのお話も聞かれましたね。
高崎:今回、富山の松龍ゼミでも繰り返し述べられたけど、やっぱり、「なぜ撮ったのか?」っていう動機は重要なんですよね。粕谷さんはいかがでしたか?
粕谷:最初に会場に到着したところで、「私の話を聞きたくて既に待っていらっしゃるお客様がいる。」って入り口で聞いて。メンバーとの挨拶もそこそこに、その柏崎(新潟)からいらしてくださったお客様と随分長くお話ししたんですね。その方も写真をやっていらっしゃるということで、とても良い時間でしたね。でも、私としては他の出展者の作品も見てお話も聞きたいじゃないですか。(笑)
高崎:そりゃそうですよね。(笑)
粕谷:なので、その後の在廊中はずっとギャラリー内をぐるぐる回って作品を見たりメンバーとお話ししてたので、あまり自分の作品の前にはいなかったんですよ。
松龍:粕谷さんのこの作品は過去に展示したことがあったんでしたっけ?
粕谷:昨年秋のAbox 富山展で発表しました。
松龍:だから既に一度、作品の脇に立ってコミュニケーション取ってるから、どちらかというと横浜校の作家と交流したい。っていうのがあったんだろうね。
粕谷:メンバーの梅原さん(昨年のとやま展の招待作家の梅原誠氏)が「浜辺の雪景色をずっと撮りたくて、北海道とか海外で撮ってみたい。でも雪がうまく撮ることができない。」って。そんな風に撮り手どうしのお話はたくさんできましたね。
【東京と富山の作品の違い】
高崎:よくメンバーやお客様から、「横浜校と富山校の作品の違いってありますか?」って尋ねれれるんですよ。
松龍:うんうん、どうですかそこは。
高崎:今回の目黒での展示が始まるまでは僕はずっと、富山のメンバーに「みんな横浜校のメンバーに負けてないよ。むしろレベル高いよ。」ってずっと言ってきてたんです。本心で。実はこないだの懇親会の会場で堂川さんからもそれについて触れられて。(笑)
堂川:そうです。「先生いつもそう仰ってたけど、来てみたら皆さん凄いレベル高いじゃないですか!」って。。(笑)
高崎:(笑)富山は2年先に写真展がスタートしてたし、写真展ごとに図録も作ってる。ある程度形になってきているところに、作家それぞれが、、、最初は絵ハガキみたいな風景写真を追いかけていただけなのに、着実に自分の世界を確立しつつある。対して横浜校のメンバーは元々レベルが高いんだけど、まとまって形になっている人が少なかったですからね。そういう意味だったんですよ。でも今回、横浜校のメンバーも展示が形になったことで、並びましたよね。そもそも、上とか下とか関係ないんだけど。
堂川:それでも、先生からご覧になって大きな違いってありますか?
高崎:時間の流れ方が違いますからね。東京と富山じゃ。横浜校と言っても都心にお勤めの方が多いですから。東京じゃテッペン(夜中の12時)まで仕事するって、そんなに珍しくないでしょう。でも富山では、季節によっては日没前に仕事を終えられるし、車通勤の方が多いから、例えばそこから夕日を撮りに行こうっていうのが可能なんですよ。都会では殆どの方が平日自分の時間が全く無いような働き方をして、その分、休日に時間とお金をかけて集中的に作品に打ち込む。やはり、その違いから生まれてくるものって大きいですよ。これも良い悪いではなく、皆さんそれぞれの暮らしの中で作品を撮っているんだから。
そんなわけで横浜校のメンバーは結構ギリギリまで苦しみましたからねぇ。大塚さん、梅原さんに至っては1週間前に作品入れ替えましたから。ritsukoさんだって、撮影を終えたのは展示の1ヶ月前でしたから。
松龍:そうだよねえ。
高崎:松龍さんからご覧になって、お二人の作品はいかがでしたか?
松龍:とにかく二人とも作品がデカいじゃない。バーン、バーン、バーン、と来るから。そういう意味でも奥の方のブースで展示会にアクセントがついたよね。
粕谷:ヨシさんのは私のよりずっと大きいですよね。
堂川:B1サイズが3枚ですね。
松龍:二人のは見栄えがして、とにかく凄いなと。しかも二人とも雪景色じゃない。別に高崎さんはそこを意識して二人を選んだわけじゃないんだろうけど。
粕谷:去年の富山展での話なんですけど、私のこの作品をご覧になって面白い感想を述べられた方がいて。高崎先生が書かれた写真展ポスターのキャッチコピー「あなたのハートに火をつけるのは誰か?」)に掛けて、「火をつけられるどころか、めっちゃ寒くなった。」って言われましたね。
松龍:確かに寒々しいよね。(笑)
粕谷:そうなんです。2人くらいの方にそう言われたのが印象的でしたね。
高崎:そっか~。「寒々しい」の向こうにあるものまで受け止めて欲しかったけど、それは次の課題だね。
松龍:二人とも雪景色だけど言語にし難いものが写ってるんだよね。僕たちから見ると北陸の雪の中に何かが写ってるって「寒い」とか「怖い」とかいう感覚ではない、言葉では表現にし難いものがあるし、サイズが大きくて並びとしても、会場の角を曲がった瞬間目に飛び込んでくるっていうのが面白い。お陰で作品のクオリティがさらに上がった展示になったなって思うね。
堂川:嬉しいです、そう仰ってくださると。
堂川:新雪に囲まれると、スタジオの中にいるようなノイキャン(ノイズキャンセル)のヘッドホンをかけているようにシーーーーンとした感じになるんですよ。
粕谷:そうそう。
高崎:あぁ~。それは富山生まれの僕も、忘れてしまっていた感覚ですね。。
堂川:で、割と近い5mくらい離れたところの声が、ものすごく遠くから聞こえる感覚に陥るんですよ。一種独特な雰囲気の。
松龍:堂川さんの場合、モデルとのやりとりしながらそんな場所で撮るわけですよね。
堂川:ええ、そうなんです。でもそういう環境だっていうことを、多分ご覧いただいた方は味わったことがないと思うんです。それがうまく伝えられないことが歯痒く思いますね。
松龍:今の話を聞いてて思うんだけど、我々はこれから写真ではない、違うステップに行った方がいいんじゃないかって思うことがありますね。「作っている行程すらアートなんじゃないか」って思うときあるんですよ。よく海外でアートフェアとかやると、3日間でドローイングしますとか、露天にでかいキャンバスを置いて描いてる姿を見てもらうっていうことをやってるんですよね。ドローイングだとそこでどんなタッチで、どんな絵の具使って、とかっていうことが感じられるんですが、雨降ってたりしてもやってたりして。写真もそういう方向に行っても面白いんじゃないかな。
高崎:中国のアーティストにいますよね。紙に敷いた火薬の爆ぜた跡が作品の、、さい、なんとか、、。
松龍:蔡國強(さい・こっきょう)?
高崎:そうそう。あの方も鑑賞者の前でパフォーマンスしますよね。むしろそれを見せるところから始まってる。
松龍:そっちもアリだなと。
堂川:最近、新しい試みで特殊な光を使って、いわゆる虫目線で花の作品撮ってるんですが、高崎先生に「虫目線なら切り花じゃなく実際の花畑で撮れないの?」って言われたんですね。けれど、、、何度トライしてもうまくいかないんです。難しくって。(笑)ただ、今まで自分がやってきたことが科学技術論文みたいなアプローチで写真を撮ってきたんで、もっとアート方向から発想を広げていくこともいいかなって、最近思うようになってきました。
松龍:だから、あまり前提条件を置かないほうがいいなと思うんです。写真界は今まで結構一定条件が厳しくあったはずなんですよ。やれ白飛びしてるだの、構図がどうのだの、ピントが来てないだのと。お作法に合っている合っていないで、選ばれてたんだけど、「え、そこですか?」っていう感じが今だとありますよね。だからこそ雪景色がそれほど珍しくない地域の人が、それを作品として持ってきているっということに興味が湧きますね。もちろん綺麗に撮る技術は必要なんだけどね。
高崎:今のピントっていう話で思い出したんですけど、展示中にお客様とのやりとりで僕が印象的だったのが中田健夫さんの作品。中田さんの桜の花のピント位置に何人かの方に気付いてもらえて「人物にピント合ってないですね。」って。それを感じ取ってくださった方はすごいなって思いましたね。
松龍:ああ、中田さんも良いよね。
高崎:あの3枚ってめちゃくちゃ奥深い作品なんですよ。鑑賞者が1枚目の作品見たときに目が行くのが中央の人物。でも実はそこにピントが来てなくて、手前の桜に来ている。あれはひと昔前だと評価されづらい作品ですよね。二人にピントを合わせると具象になってしまい「どのそこの何某さん」っていう説明になってしまうけど、人物にピンが来ていないことで抽象化して「鑑賞者にとっての誰か」に転換しやすい。共感しやすいステップになると思うんです。
高崎:そのあとで2枚目の、散る桜を見ると「来年もこの桜を見ることができるだろうか。」となって、最後の一枚では神社の桜になって「祈り」に繋がるんですよ。
粕谷:そう、繋がってるんですよね。
松龍:中田さんは、もちろん自分の意思があって、あそこでシャッターを切っているから、何らかの意思がある。撮れてしまったものの、意味がまだ腹の中に落ちていないかもしれない。ただ、抜群に良いのが本人が気付いていない。っていうところが、こちらのやり甲斐いなんですよ。(笑)
【初めて展示したときのこと。】
松龍:粕谷さんは人生で最初に展示したのはいつごろなんですか。
粕谷:2011年ですね。
松龍:写真をやりだしたきっかけは?
粕谷:犬を3頭飼ってたんですよ。犬友がいっぱいいまして、その中の一人が「犬を可愛く撮りたい」っていうことでキャノンの一眼レフカメラを買ったんですよ。その方の撮るワンコがめちゃ可愛かったんですよ。それに感化されてみんな右に倣えでキャノンの一眼レフを買ったというエピソードがあるんです。同じ機材だから教えてもらい易いし。それが写真を始めたきっかけなんです。そもそもあんまり写真は好きじゃなかったんで。
松龍:その当初の目的は達成されたの?
粕谷:はい、犬ばっかり撮ってたんですけど、「可愛く撮れたな。」って満足いくところには行きました。そのうちにお花なんかも好きなので散歩にカメラを持っていくようになりましたね。道端のお花とか撮り始めるようになったので、、。やっぱり原点はスナップなんですよ。
高崎:堂川さんはいつですか?最初に展示したのは?
堂川:正確に覚えてないんですけど、粕谷さんと同じ頃じゃないですかね。2011年頃だったと思います。自分は家にフィルムカメラがあったんで、その頃は普通に旅行に行きました「パチリ」。遊びに行きました「パチリ」。こんなの食べました「パチリ」。という感じだったので、アートだとか全く考えもしないで写真を撮ってたんですけど、たまたま友達がキャノンの5Dを持ってて一緒に能登に旅行に行ったんです。そいつが撮る写真が、、、同じところ撮ってるのに、なんでこんなに違うんだ?とショックを受けたんです。その時初めて単焦点レンズという存在を知って、、、。
松龍:「あれを買えば俺もいい写真が撮れる」って。(笑)
堂川:そうそう。それで一眼レフに走って、、、今に至るという感じですね。
松龍:それはカメラを入手して、プリントなりデータなりで良い写真が撮れる満足感ということでしょうけど、展示に至るまでには何があったんですか?
堂川:当時あるグループに入っていたんですが、実はそれがカメラ主体ではなく、車のグループでして。みんな同じ車に乗ってどこかに遊びに行こう。みたいなそういう車繋がりの友達と遊んでいたんです。その中にカメラも趣味っていう人がいて。その仲間たちと金沢の芸術村で展示をしたんです。それはお散歩(富山おさんぽ写真部)のずっと前なんで、、。
粕谷:まだインスタも始める前ですよね。
堂川:そう、その写真展には誘われたんですよ。デジカメも買ってたんで誘われるがままに展示したというのが最初でしたね。
松龍:まあ、最初はそんなもんだよね。じゃあ、教室に通ってるわけじゃなく、車の同好会の人たちの中に展示に詳しい方がいて、会場を押さえて、自分で額装して出すんだと。そういうことに乗っかって、わかんないところは教えてもらいながら、、という感じだったんですね。
堂川:そうですね。そういうことが何回もあって、いろんな人達と繋がって写真展を何回か経験していくっていう感じでした。
高崎:粕谷さんは?
粕谷:私は教室通ってましたけど。「女子カメラ部」っていうのがあって。そこでの展示が最初でしたね。
松龍:そこでは在廊して解説したりしたの?
粕谷:そんな感じではなかったです。ただ展示して観ていただくことが中心で。キャッキャ言いながら。(笑)
松龍:文化祭ね。
粕谷:そうです。
高崎:僕がAbox展で招待作家の枠を設けたのは、さっきの粕谷さんが仰ってた意味での作家同士の交流っていうのもあるんだけど、、、写真家って、活動している地元でまず展示するじゃないですか。まず友人や身内から応援してくれる人を増やしていくということでは有意義なんだけど、じゃあ、自分のことを知らないエリアで展示した時に、どんな反応があるのか?どう評価されるんだろう?っていうことを感じる機会にして欲しかったんです。
【Abox展はお客様の滞在時間が長い。】
堂川:よくあるグループ展で、、、だら~と並んでるだけ、みたいなのあるじゃないですか。。。Abox展はそれらとは全く違いますよね。。
高崎:グループ展だからコンパクトにまとめてもらうとはいえ、Aboxはステートメントも出してもらうし、作家としての責任がついてまわる。そもそも講師二人体制だからクオリティ、文脈はしっかりしたものにせざるをえないから。富山も東京も、小さくまとめようとは誰も思ってないよね。
粕谷:結構、産みの苦しみはありますけど(笑)。
高崎:(笑)それからAbox展は東京でも富山でも、お客様の在廊時間が長いですよね。1~2時間見ていかれるのが普通な気がします。
粕谷:富山は市街地にあるガラス美術館での展示なので、他の大きな企画展を見に来られて、そのついでに寄って行かれる方も多いんですよ。でも、それにしては随分時間をかけてご覧頂く方が多いので嬉しいですよね。
高崎:反応があるって嬉しいですよね。
堂川:Abox展ではあまりないけど、展示してるとお客様で毒づいて帰られる方もいらっやいますからね。
高崎:え、、そうなんですか?
堂川:「自己満足的な写真ばかりで自分たちだけ楽しんでるのか?」とか言葉を捨てて帰られたり、、。
粕谷:別のグループ展では結構おられますよ、、、。旅行してきた時の写真なんかだと、「あたなたち、これは何処何処に行ってきた。って自慢したいの?私への当てつけ?」って。
高崎:え~~~、厳しい言葉にさらされてきてるんですねお二人とも。でもそうやって反応してくださる方には感謝ですね。
松龍:そう、感情を掻きむしるというか、、、それはアートとして成功してると思うよ。「不快だ」って怒られる方が、アートとしては無視されるよりは絶対に良い。
粕谷:そうなんですよ。
松龍:アートっぽい作品を見せた時に、怒らないにしても意味がわかってもらえない方もいらっしゃる。まるで言語が違って話がかみ合わない。互いに共感できないっていうときありますよね。
高崎:今回僕は毎日会場に顔出してたけど、メンバーは皆んなちゃんとお客様と作品を通じて対話できてたと思う。
松龍:そうだね。
高崎:だから展示を終えたお二人が両方での土地で、何かを感じ取ることができたのだとしたら、良かったと思いますね。
堂川&粕谷:ありがとうございます。
高崎:最後に一言ずつお願いできますか?
堂川:今回、ご事情があって出展されなかったステップアップのメンバーの方の作品もぜひ見てみたいです。
粕谷:横浜校のメンバーの作品は、どれも思いが強くて、仕上げていく過程の密度がものすごく濃いんだなと感じました。私は何よりそのあたりが刺激になりましたね。
高崎:粕谷さんが作品をご覧になっただけで、その仕上がりの密度の濃さを感じてくださったのだとしたら、それは写真に成果が表れているっていうことですから、メンバーにとって嬉しいことですね。
松龍:まあ、それぞれが自分を追い込むよね。。徹底的に、苦しんで。。
粕谷:富山は、そこまで追い込むっていうのはなかったですよね。
堂川:そうね。
松龍:その違いは一体何なんだろうね。
粕谷:だって撮るチャンスが多いから。どんどん外に出て撮りに行くんですよ。(笑)高崎:四季がはっきりしてるし、イベントも多いからね。
松龍:そして「撮ったら見てほしい。」になるんだ。
粕谷:そうです。
高崎:富山校では僕や講師の柴田さんが、そうして撮ったものから、文脈っていうか、本人がそれを撮るべき道筋があるのか?っていうことを作家ごとに探っていくんですよ。
粕谷:一つの作品でずうっと引っ張っていくっていうことは、今までの富山のメンバーには、あまりなかったかもしれないですね。でもこういう交流があって目覚めていくのかもしれません。
松龍:なるほど~。面白いね。秋のAbox 富山展も楽しみだね。
高崎:では、今日はありがとうございました。
堂川 嘉久 Doukawa Yoshihisa
石川県金沢市出身 富山市在住
独自で写真を学び、SNSや仲間との写真展などで作品発表を行っていましたが2015年に高崎勉氏と出会い、指導を受けるようになりました。
記録から作品を目指し挑戦中です。
粕谷 千春 Kasuya Chiharu
写真家。愛媛県生まれ、富山県富山市在住。 2009年、3匹の愛犬の写真を撮るためにデジタル1眼レフカメラを購入。
以来写真に魅了され、愛犬のみならず、スナップ写真を中心に風景、人物、お花など撮り続ける。2012年より地元の写真クラブ等で定期的に写真展に出展。2015年には、「Abox Photo Seminar」に所属し、作品制作に意欲的に取り組む。
「Abox photo Club とやま」所属。
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