ABOX PEOPLE VOL.5 「アートフォト講座 受講生 梅原 誠さん スペシャルインタビュー」

interview Vo1.5

アートフォト講座受講生 梅原 誠さん インタビュー

聞き手:Abox Photo Academy塾長 高崎勉(アートフォトコース担当)




今回の「Abox People」はアートフォト講座受講生の梅原誠さんです。先だって招待作家として出展した「Abox Photo Cubとやま2018展」を終え、新たな目標に向かう現在の心境、そして写真以外に生活の一部になっている旅とコーヒーのお話を伺いました。


【写真を始めたきっかけ。】

高崎:今日はよろしくお願いします。まずは「Abox Photo Clubとやま2018展」への招待作家としてのご出展ありがとうございました。


梅原:こちらこそ、ありがとうございました。


高崎:その話は後半にとっておくとして、まず、これは皆さんに伺っていることなんですが、写真を始めたきっかけはなんですか?


梅原:元々、コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を持ってて、旅行の時には撮ってたんです。で、2013年に前の会社から現職に転職するタイミングで長期の休みができたので、初めて一人旅 での海外旅行に行くことになったんです。いろいろ旅雑誌や、広告写真で綺麗な写真は見てるけど、せっかく行くんだから「自分でもそういう綺麗な写真が撮りたい」と思ってミラーレスを買ったんです。


高崎:一眼レフではなくミラーレスを選択したのは、旅行で荷物にならないようにっていうことですよね。


梅原:そうですね。価格のこともありましたけど各メーカーからミラーレス機が出始めた時期だったのでとても魅力的に感じました。


高崎:操作性も大事だけど、荷物として負担になっちゃうと旅が楽しめないからね。でも、それまでは「写真」をあまり「作品」として意識はしてなかったんですね。


梅原:そうですね。旅先で記念写真的には撮っていたんですけど。


高崎:失礼ですが今、お幾つでしたっけ?


梅原:41歳です。


高崎:じゃあ、30代半ばのお話ですよね。梅原さんと僕とは10歳しか(笑)違わないってことは、そんなに感覚のズレはないと思うんだけど、高校生の時とか男の子ってバイクとかギターとかスポーツに興味が行くでしょう。その中にカメラもあったと思うんだけど、その頃に写真は興味なかったの?


梅原:なかったですね。ずっと無趣味だったんですよ。


高崎:意外ですね。部活は?


梅原:バスケットをやってましたけど2年間だけですね。高校卒業してからの趣味は、強いて言えば、、、「馬」ですかね。


高崎:競馬ですか?


梅原:賭ける方もやりましたけど、馬そのものが好きでしたね。


高崎:馬って、美しいですよね。たまに電車の中で競馬の雑誌を開いている人がいて嫌でも目に入っちゃうんだけど、サラブレッドを真横から図鑑的に撮った写真がズラリと掲載されている。あれを見て筋肉のつき方とか研究するんですもんね。何事もそうなんだけど奥が深いというか、マニアにはたまらないんだろうなって思いますよ。それにヨーロッパでは貴族の嗜みであり、競馬場は社交場ですよね。


梅原:そうですね。あまり日本ではそういうイメージないですけど。


高崎:ジャック=アンリ・ラルティーグの作品にも競馬場に集う貴婦人の作品があるのが印象的です。


梅原:まだ写真を始める前ですけど、大学時代は友人と馬を見に北海道に行ってましたね。


高崎:その時に馬の写真を撮ろうとは思わなかったんだ。


梅原:そうですね。その時は、、、。一応フィルムカメラの「写ルンです」とかで撮ってはいましたけど、記念写真の延長でしたね。近くに寄れた時は馬のアップが撮れましたけど作品と呼ぶには程遠いものでした。


高崎:なるほど。


梅原:社会人になって海外旅行に行くようになってからも、いろんな国の競馬場を訪れて馬を見に行きましたね。パリ、ロンドン、、、香港にも行きました。


高崎:それはもう立派な趣味ですね。僕が梅原さんに対して抱いているイメージは「旅好きな人」なんだけど、初めは目的があっての旅行だったんですね。


梅原:そうです。そして旅そのものが好きになっていったんですけど、写真が思うように撮れない。自分が感動したものと、撮った写真との間にすごくズレを感じたんです。雑誌だとこんなに綺麗なのに、自分の写真は全然違うって。


高崎:うんうん。


梅原:そこで写真を習おうって思ったんです。


高崎:まあ、その頃はまだAbox Photo Academyどころか、前身のTakasaki Seminarすら開講してなかったわけですから、当然他の写真教室の通われたということになりますが、「写真を習う」って、いかがでしたか?


梅原:基礎が学べてよかったんですが、そこで仲間に出会えたのが本当に良かったですね。


高崎:それは、素敵ですね。


梅原:そのあとも幾つかの講座に通いましたが、写真教室で出会った仲間たちとは今でも一緒に旅行に行ったり、グループ展を開いたりしています。




高崎:梅原さんはAboxの一期生に当たるんですが、当校をお知りになったきっかけは?


梅原:ちょうど他の写真教室に通い終わって宙に浮いてた時期だったんですが、やはりAboxの事が写真仲間の間で話題になっていて。そしたらちょうど知り合いの松龍さんが講座を担当なさるということで興味が湧きました。


高崎:趣味って、一通り学ぶと、あとは自分で地道に積み上げていくとか、もしくは自分の生活の一部に取り入れてしまったあとは、別の興味に走りそうだけど、幾つかの写真講座に通っても、まだ学びたいと思ったんですね。




梅原:そうですね。一つ終わったら、次は人物撮影を学びたいとか、スタジオでのライティングを経験したいとか、足りないものを追いかけるようになりましたね。


高崎:やっぱり「思い通りに撮ることができない」っていうことが、学ぼうっていう深みにハマっていく理由なんですね。


梅原:その通りですね。まあ写真が面白かったし、それ以外に打ち込むものが見当たらなかったんでしょうね。だから社会人になってできた友達は、ほとんどが写真を通じてなんですよ。大人になってから会社以外の人とコミュニケーションをとることができるようになったのは、もうカメラ様々ですね。写真にも仲間にも感謝してます。


高崎:だいたい誰もが社会人になって数年経つと、時間とお金に少し余裕が出てきて、学生時代にのめり込むことができなかったことを取り戻そうとするじゃない。


梅原:そうですね。


高崎:で、大抵は会社でキャリアを積んでいくと「次はゴルフ」っていうレールがあるじゃない。そういうものにはいかなかったんですね。


梅原:実はゴルフはやってみたんですよ。でも。コースに数回出ただけで、それ以上のめり込むことはなかったですね。ただあとしばらくしたらまたゴルフに興味が出てくるかもしれないですが。


高崎:写真は格別なんですね。


梅原:そういうことになりますね。


高崎:先に旅があって、写真を学んで、また旅に出て、旅の楽しみが増えて、、を繰り返すうちに旅に新しい目的が付帯してきて、それが写真作品を撮ることになっていったと、、。


梅原:それはありますね。もう、ただの観光じゃなくなったです。


高崎:観光を切り捨てられるってすごい。


梅原:人がたくさん居る場所を自然と避けるようになってきました。名所を見て楽しむのはもちろんあるんですけどね。でもそこでは撮って楽しむことができないなって。美術館とか教会は好きなんで、行くことは行くんですが、のんびり好きに過ごせる空間の方が好きですね。街全体が楽しめるというか。




高崎:じゃあ、もちろんパックツアーではなく、旅程は自分で組むんですよね。


梅原:ツアーはもう無理ですね。気分で動いてますから。(笑)ただ、ついこないだ仲間たちとタイに行った時は旅程の一部がパックツアーで、ずいぶん楽に感じましたけどね。乗ってるだけで着くんだな~と。。(笑)


高崎:僕も昔、懸賞でパックの海外旅行が当選したことがあるんだけど、海外なのに思考停止しちゃうっていうか、そのうち写真までもが思考を止めてしまう気がした。そもそも粘れないしね。 団体行動を強いられる時は写真と切り離して楽しまないと、旅としても作品としても消化不良起こしちゃうなと。


梅原:わかります。「ここで夕日を待とう。」なんてありえないですもんね。(笑)行く手段が個人レベルでは手配できないときとか、ツアーでしか行けない場所もあるんで、そういうときは利用しますが。


高崎:年に数回海外に行かれているイメージですが、国内外でどのくらい旅に出ていますか?


梅原:海外に 2~3回ほど。


高崎:今年はオランダとベルギーに行かれましたよね。


梅原:はい。国内旅行も、、、 同じほどの回数ですかね。北海道の美瑛には毎年行ってるんですが。


高崎:美瑛ですか!ご存知だとは思いますが、Aboxには美瑛から写真家の中西敏貴先生にお越しいただいて講座を担当してもらっているんですよ。


梅原:そうですよね。美瑛でたまたま入ったカフェに中西さんの作品が飾ってあるのを拝見しているんですが、ご本人にはまだお目にかかったことがなくって。雪の写真がうまく撮りたいなと思っているので美瑛に通ってるんですよね。


高崎:そうなんだ。アドバンストコースを修了したら、ぜひ中西さんの講座も受講なさってください。。(笑)


【旅と写真とコーヒーと。】

高崎:梅原さんといえば、旅の他にもう一つイメージするのが、、


梅原:コーヒーですよね。。


高崎:そうそう。僕もコーヒーは好きですけど、作家のプロフィールにまで記載しちゃうっていうのは特別なんだろうなって。何かのめり込むきっかけってあったんですか?


梅原:まあ、、、ぶっちゃけて言えば、生活にオシャレ感を取り込みたいなっていうか、雰囲気的な憧れで入ったんですよ。最初はスタバとかお店に行くだけだったのですが、自分でちゃんと豆を挽くようになったのは10年くらい前からですね。そのあと、ちょっと忙しくなると挽くのが面倒くさくなって挽いた豆を買うようになったんですが、でもやっぱり自分で挽いて淹れた方がおいしいなって。


高崎:わかるわかる。


梅原:そのうちに挽いているプロセスが好きになっちゃたんですよ。朝もコーヒーを挽いて淹れて~飲んで~会社に行く、、というルーティンが自分の暮らしの中で重要なリズムを作り出しているんです。




高崎:勤務先ってフレックス(タイム)ですか?


梅原:いえ、違います。出社時刻は決まってます。


高崎:毎朝のこととなるとキツくありません?寝坊する時もあるだろうし、、。


梅原:いやあ、、あんまりないです。寝坊は。


高崎:ごめんなさい、ゼミの時もそうなんだけど、いつもお疲れで眠そうになさってるんで。 (笑)


梅原:(笑)すいません!


高崎:きっと普段とてもお忙しくて、ボロボロになりながらも写真撮ったり、旅行に行かれてるのかなっていうイメージを勝手に抱いてました。だからコーヒーは休日の嗜みなのかなって勝手に思ってたんですが毎朝、優雅にコーヒーを淹れてるって、相当好きなんですね。

梅原:そうですね。多分生活にリズムをつけたいんですよ。決まったリズムで朝の活動を始めることで暮していかないと、身体が持たないなって。その一つがコーヒーなんです。

高崎:いやあ、、でも僕はそこまでは凝れない。。特に朝は面倒くささが勝っちゃって。。一人の時はインスタントで済ませることも多いですから。


梅原:実はここ5~6年の間にコーヒーの世界ってかなり変わったんですよ。今まではスタバとかタリーズといったシアトル系が流行っていたんですけど、サードウェーブっていうコーヒーのブームが来てるんです。豆はだいたいブレンドじゃないですか。コーヒーの豆ってフルーツなんですが、例えばもっといろんな味が出るはずだから豆の焼き方をもっと浅くして、豆本来の味をもっと出しましょう、という流れなんです。


高崎:全く知りませんでした。


梅原:だから、ワインのような世界になってきていますね。今まで以上に広い味わい方がある。。自分が毎日飲んでいる中にでも味が変わっていくので奥が深いですよ。あとはバリスタとお話をしていると面白いですね。


高崎:確か、Aboxに通い始めて2回目くらいの講評会に珈琲店の作品をお持ちいただきましたよね。


梅原:はい。そうです。覚えていただいてましたか。(笑)


高崎:うん、確か旅行の作品とは全く違って、店内とバリスタが写っていましたよね。ちょっと厳しめの講評をしたような覚えがある。。


梅原:強烈でした。(笑)


高崎:実は僕自身が仕事の撮影でコーヒーショップのシーンを撮る機会があるものだから、つい力が入っちゃったんだけど。ただね、、いくらプロでも、その事柄が好きな人が撮った写真には最後は敵わないって思うんです。最後は知識と愛ですよ。


梅原:そうなんですか~。


高崎:それは間違いないです。(笑)でも、そのあとコーヒーショップの作品の続編は見せてもらってないけど、その代わりに旅先のシーンでコーヒーやカフェの1シーンがよく登場するようになった気がする。


梅原:そうですね。自分の気持ちの問題なのか、日本国内よりも海外の方がコーヒーのシーンは撮りやすいです。お店の雰囲気が本物ですしね。


高崎:コーヒーと写真の共通点ってありますか?


梅原:両方、答えがないこと、、、。ですかね。


高崎:おっ、いきなり素敵な答えが。(笑)でもその通りですね。。





梅原:写真も「答え」っていうものが無いじゃないですか。見る人にとっても、評価する方にとっても、全然バラバラで違いますよね。


高崎:まあ、特にウチ(Abox)のアートフォトコースは講師が二人体制だからねえ。。


梅原:そう、だからいろんな答えが返ってきて、意見が真っ二つなこともある。多分、コーヒーと写真に限った話じゃなく、料理なんかもそうなんでしょうけど。結局は味わう人の好みに委ねられますからね。ただ一定のレベルまでは変わらないのでしょうけど。


高崎:なるほど。


梅原:写真もある一定のレベルまで到達したところで、ようやく個性だのっていう話ができるというか、そういったところは似てると思いますね。


高崎:人によって捉え方が違う。答えがないっていうことですね。


梅原:そうです。


高崎:僕は梅原さんほど、コーヒーにはのめり込まなかったけど、コーヒーって味がしっかりしているじゃないですか。


梅原:はい。


高崎:たまに長野の親戚の家に行ってコーヒーを出されると、こんなに濃い味のものなのに水の違いが出るっていうか、すごく繊細なものなんだと思いましたね。


梅原:確かにそうですね。


高崎:その豆のことを尋ねたら、軽井沢で有名なスーパーにもたくさん売ってるんで帰りがけに買って帰って東京で淹れるんだけど、味が全く違う。


梅原:水の違いは大きいかもしれませんね。でも、海外では決してそこまで水にこだわっていないはずなんですよ。日本の水って美味しいですからね。硬水、軟水の違いで味に開きが出るっていうのはありますが、日本人の舌はやはり繊細なんですね。


高崎:昔のことだけど、ロケでオーストラリアの僻地に行った時、農園で出されたコーヒーが不味くって、、。でも「水道の通っていないところだから貴重な雨水で淹れてくださったんだ。感謝するように。」ってコーディネーターに教えられたことがある。各国で事情も違うから面白いよね。


梅原:毎朝飲まれますか?


高崎:うん、飲まないと頭が冴えない気がして。ただ面倒くさくてインスタントで済ませることが多いから、今日のお話を聞いて心を入れ替えないとと。。


梅原:いや、どんな形でも飲めれば美味しいですから。


高崎:道具と言えば写真ではカメラになるけど、コーヒーの道具にもこだわられるんでしょうね。僕も知ってるけど凝ろうと思えばいくらでも深みにはまりそうですね。


梅原:珈琲入れる道具が4つあります。(苦笑)昔ながらのドリップ式と、V60っていうトルネード型のと、ウェーブコーヒーっていう波打って淹れるタイプのものと、ネルドリップですね。


高崎:最初と最後の二つはわかるけど、、


梅原:挽く器具もセラミック刃のものを使ってます。電動も使ってましたがうるさいし、味がイマイチな気がして使わなくなりました。


高崎:僕も自分のことを凝り性だなって思っていたけど、梅原さんの前では何も語れない、、。


梅原:結局コーヒって化学なんです。どれ位の量の豆を、どれ位の時間で、どれ位のお湯の量で淹れるかっていうことをちゃんと測っておかないと同じように淹れられませんから。


高崎:なんだか、フィルム現像のお話みたいだけど、結局は同じことなんだろうね。データを出して、分析して、同じものを作るには同じ工程をデータ通りに行うっていう。闇雲に試験管に色水作って、眺めていても研究って言えないからね。


梅原:その通りですね。




高崎:でも梅原さんの場合はそのデータ集積によって美味しく飲むっていうこと以外に、儀式的に生活に取り入れて生活にリズムをもたらすっていうことなんですね。


梅原:そうです。それができなくなると精神的に余裕がなくなってきたなっていう量りにしています。一人暮らしだから体調崩せないですからね。。


高崎:趣味の世界って、、入り方は様々あると思うんだけど、たいていの趣味って、「暫くお休み」ができると思うんです。写真だってある程度自在に撮れるようになったら、「もう習わなくっていいや」っていう考えもOKだと思うんですが、梅原さんはちゃんと3つの世界が生活に収まっている気がしますね。


梅原:元々が無趣味だった割に、実は今もスキューバやりたいとか、欲はあるんですよ。でも、これ以上は時間的にも金銭的にも広げられません。というのも、その3つが自分にとって繋がっているからなんですよね。旅に出たら作品を撮りたいし、その国のコーヒも味わいたい。だからどれも休むことができないんです。


高崎:いろいろなことを通過して、今の梅原さんが自分らしい姿だっていうことなんでしょうね。


梅原:30代の中盤に生活の変化があって、その頃からですね。今の自分のスタイルができてきたのは。


高崎:コーヒーは毎日のものなんでしょうけど、写真はどうですか?カメラは仕事の時も持っていかれるんですか?


梅原:いや、以前は通勤の時も手放さなかったんですが、最近はそんなことはないですね。「作品と結びつかないな~」っていう時は持たないです。


高崎:なるほど。でも、それは作家っぽく成長していることだと思うよ。


梅原:これじゃあ、いけないなとは思っているんですが。(笑)


高崎:気にしないでいいと思いますよ。梅原さんにとって現時点では旅とコーヒーと写真が結びついているんだから、無理やり日常を写真で追わなくてもいいでしょう。もちろん撮りたくなったらまた持ち歩けばいいわけで。


梅原:そうですよね。


高崎:僕だけでなく、松龍さん(アートフォトコース講師)も、やっぱりテーマがない時は無駄に撮らないと思うんです。ただ、日常の中に新しいテーマが見つかるかもしれない。と思う時は持ち歩くし、、、最近だと僕は会員制のブログをやっているから、それは仕事としてカメラを持ち歩くし、松龍さんだってゼミの中で使うための作例を撮るチャンスを窺っている時は持ち歩くんだろうけど。。


梅原:ただ、「あ~、カメラ持ってきておけばよかったな」っていう瞬間はありますよね。(笑)

高崎:それは僕もあるある。(笑)


梅原:何年か前は仕事が今ほど忙しくなかったし、明るいうちに帰ることもできたので通勤途中に撮ることができたんですが、今はもう帰りも遅いし、撮ってる暇がないから持ち歩けないですよ。ただ、雪が降ると持っていきますが。(笑)


高崎:それも一緒。わかるわかる。


梅原:非日常な景色があるとスイッチが入りますね。


高崎:僕の場合はカメラかストロボのスイッチを入れた時に戦闘モードのような「撮影するぞ!」と意識が切り替わるんだけど、梅原さんはonとoffのスイッチが「旅」そのものなのかもしれませんね。


【趣味で終われない。】

高崎:梅原さんの場合、作品のほとんどが旅写真だから、一カ月おきの講座に作品を持ってこられないこともありますよね。そんな時に他の受講生の作品に触れたりして、いかがですか?


梅原:そうですね。2回ほど作品を持ってきませんでした。「せっかくだから過去の作品を持って先生の意見を聞く機会にしようかな」とも思うんですが、その時の自分のテーマに即した作品がない時は、持っていってもしょうがないから、他の方の作品を通して勉強しようっていう気持ちですね。


高崎:作品ってやっぱり時代性が必要なんだよね。。別に「2018年の秋がどうとか」っていうことだけじゃなく、自分がその時に何を感じて生きているのかっていうことを含めて。だから、僕もその気持ちはわかるなあ。テクニカルなことならともかく、今の自分じゃないものを講評してもらってもなあって。


梅原:そうなんです。


高崎:でもさ、ここ数ヶ月の間で極端に写真変わったよね。すごく良くなった。


梅原:そうですか~。よかったです。


高崎:何かしら自己表現のコツというか道筋というか、メソッドが一つ見つかったのかもしれないけど、普通はいきなり豹変は無理でしょう。でも、確実に変わった。


梅原:ありがとうございます。


高崎:前は旅人としてその街を傍観しているっていう写真だった。もちろん、それはそれで極めれば良い写真もあるんだけど、、、、最近はただの旅人ではなく梅原 誠として自分と街の人々を結びつけているようになった。どうして変わったんだろう。




梅原:ずっと写真展というものは続けてきたんです。その中で作品をセレクトする機会ができて、作品をご覧になった方々がどんな印象を受けたのかっていうお話も聞けたりして、そこから刺激を受けてきたんだと思います。そしてAboxの厳しい講評。それらがなきゃ、自己満足の趣味で終わってましたね。


高崎:趣味で終われないと。。趣味でなかったらどうなりたいですか?


梅原:う~ん、やっぱり、作品を商品として売れる作家になりたいですね。飾って欲しいんですよ。 それが僕にとっては喜びですね。大それた話かもしれないけど、結局日本の社会ってアートって評価されにくいっていうか、一部の方の贅沢品という気がします。でも海外に行くとそんなことなくて、花を活けるように生活の一部になっていて、その方が人生が豊かになれる気がするんです。 そのお手伝いを作家としての側から提供していきたいって思いますね。


高崎:素敵な目標ですね。


梅原:作品を見る機会って僕は写真を習うまではなかったんです。


高崎:それは写真だけじゃなく、アートも?


梅原:そうです。お店に入って「絵が飾ってあるな~」って見たりはしたんですが、自分で買うとか飾るものだっていう意識はあまりなかったんです。僕がそこに気づいたように、他の方も気づくきっかけになってくれたらいいなと。だからカフェだったり、お店とかに飾ってもらうのって良いですよね。


高崎:さっき『「知識と愛」がある者にはそれをテーマにした作品では敵わない。』って話をしましたが、僕は昔っから風景写真はプロカメラマンよりもバイカー、、つまり、ちょこちょこ動ける旅人には敵わないって言ってきてるんです。どんなに撮影の知識や技術があったって、その場所に居合わせた者しにかシャッターは切れないわけですから。フィルム時代からそう思っていたんで、今なんてスマホがあればいい写真が撮れますよね。そんな意味ではそのジャンルに長けた人に撮影の仕事が来る時代が来ていると思うんですよね。だから作品を撮って買ってもらうってこと以外でも「梅原さんに撮ってもらいたい」っていうチャンスが来るでしょうね。


梅原:カメラマンじゃなくてもその道が好きで詳しい人が写真を撮るっていうことですか。


高崎:そう。もちろんカメラマンの仕事は減るんだろうけど、とっくにそういう時代だよね。ただ、良い報酬がもらえるかどうかは別問題だけど。


梅原:どの業界もそうですよね。いろんな人が関われるようになってきたし、僕の本業の世界もアプリケーションでできる範囲が増えてきて、真面目に将来のことを考えなきゃいけなくなっていますから。


高崎:システム系のお仕事でしたっけ?


梅原:そうです。


高崎:どの業界も同じですね。


【招待作家としての「Abox Photo Club とやま展」。】

高崎:「Abox Photo Club とやま 2018展」に招待作家として声がかかった時はどう思われましたか?


梅原:正直思ったのは、「なぜ僕なんだろうか」と、、。うまく言えないんですけど、そんなに評価されているとは思っていなかったんで。


高崎:え~、そうなの?いっぱい褒めてきた気がするんだけど(笑)


梅原:他の生徒にもっとすごい人がいるって思ってたんで、意外でした。


高崎:「選ばれるのは当然自分しかいない。」って思ってなかった?(笑)


梅原:いえいえ、(笑)そのあと、高崎先生が、「こうこうこういう理由で選んだ」って仰ってくださった時に、「なるほど確かにそういう理由なら僕だな。」って腑に落ちましたけど。


高崎:実はかなり早い段階で梅原さんかな。って決めてたんだよね。。


梅原:え、、そうなんですか!?


高崎:うん。昨年(2017年)のとやま展が終わった時、お客様に大好評だったし、たった4日間で1,000人の来場者数越えたし、参加メンバーは僕を含めて満足度が結構高かったんですよ。出展者がそのあと「Abox展ロス」に陥っちゃうくらい。。(笑)


梅原:昨年は僕も行きましたけど、とにかくレベルが高くてショック受けましたから。。


高崎:そう。でもね、昨年の展示のディレクションをしている時から、「みんなテーマが重いな」って感じてたの。その理由は明らかで、一つは僕の影響なんだよね。(笑)

梅原:笑えないっす。(笑)


高崎:そして、これは富山に限ったことじゃないんだけど、地方で生活するっていうことは都会よりも自分の親や祖父母といった老齢者と身近に暮らすっていうことなんです。つまり、人の生き死にと近いところで暮らしている。都会の人はすぐに作品に「死生観」っていう言葉で作品を括ろうとするけど、田舎で暮らす人にしてみれば当たり前のことですからね。そういう僕だって、お袋はもう80歳を超えているし、年に5~6回母親の顔を見に行くと言っても、東京で生活している普段は「生き死に」や「老い」という課題から距離がある。梅原さんって東京の方でし たっけ?


梅原:そうです、生まれも育ちも東京です。


高崎:、、っぽいよね。。(笑)だから、招待作家の力で富山の写真家たちが背負っているものを少し下ろしてあげたいなと。梅原さんの作品は純粋に旅行を楽しんで、その上で梅原誠というフィルターを通した世界を表現している。そんな素直な写真も忘れて欲しくないな。って思ったんです。


梅原:まあ、確かに「旅行だ~、わ~い!」っていう軽さは持ってます。(笑)


高崎:「わ~い」だけじゃ困るんだけど、(笑)他のジャンルのアートにはない「シャッターチャンス」「被写体の前に立つ」という写真の本質が出ていますからね。


梅原:僕のどの作品でそう思われましたか?


高崎:確か、初めて作品を拝見したステップアップコース第一回目の講評で見せていただいた、チェスをする街人の1枚で決めてました。




梅原:本当に初回ですね。


高崎:そう、ただ、その後でなかなかそれを超える傑作が出てこないんだけど。(笑)でも、毎回見せていただく20枚ほどの中に必ず光る1枚があるんで、不安はなかったです。その「チェスをする街人」1枚だけの出展でもいいと思っていたので。


梅原:その他の数十枚が作家の評価を下げているって、確かに言われました。(笑)


高崎:でも、同じく招待作家の丹波由美子さん(横浜校受講生)の作品も、講師の中西敏貴先生の作品も、富山展に彩りを添えてくださっただけではなく、作家の力量や情熱を見せつけて富山の方々に良い影響を与えてくださいました。


梅原:確かに昨年とはガラリと変わりましたよね。重いな~っていうのが、少し軽くなったというか。


高崎:出展メンバーが多少入れ替わったってこともあるけど、確かに雰囲気は変わりましたね。昨年もご覧になっている梅原さんから見て富山のメンバーの作品はいかがでした?

梅原:まあ正直、今年の作品の方が僕は心地よかったですね。山田さんや岡本さんのお洒落なスナップ作品からもちゃんと「人」を感じたし、雪の写真が好きなので粕谷さんの作品にも惹かれたし、そんな好きな写真の中に自分の作品があることも勿論嬉しかったですね。そもそも、あんなに素晴らしい美術館(富山ガラス美術館)に僕の作品が展示できるなんて夢のようですからね。


高崎:まあ、梅原さんはこれまでに色々写真展をなさってこられたわけだけど、僕は初めて梅原さんの展示に関わらせてもらった。そして出展した作品があの作品で、梅原 誠っていう写真家がすごく変化した瞬間に立ち会えたっていうのは、僕も本当に嬉しかったですよ。。


梅原:ありがとうございます。。高崎先生には「変わったよね。」って、何度も言っていただけましたよね。


高崎:そういえば、富山展の会期が迫って出展作品を最終セレクトしたのは梅原さんの個展 「Things change」の会場ででしたね。


梅原:そうです。二子玉川園のスタバでの個展にお越しくださいまして。。


高崎:実はあの時点では、スタバに展示した作品の中から選ぼうって思って伺ったんだよね。 そこで「最近の旅で撮ったばかりの作品です。」ってタブレットで見せてもらったオランダ旅行の作品が、これまたもう傑作揃いで。。。


梅原:ありがとうございます!


高崎:当初出展しようとしてた作品の構想を全て入れ替えちゃったというのは、作家と作品を選んでいた僕自身が驚きでしたからね。一番心を鷲掴みにされたのは写真集にも掲載した自転車の写真です。




梅原:粘って撮った甲斐がありました。


高崎:梅原さんはハービー山口さんや市橋織江さんとか好きな写真家の名前をたまに出されて、その影響も受けているんだろうなっていうのはわかるし、それはどんな作家にでもあることなんだけど、あの自転車の1枚は梅原さんしか撮れない写真だと思いますね。


梅原:それはどんなところがですか。


高崎:やっぱり今までの写真は旅して、「パシャ」。何処何処へ行って「パシャ」。だったのが、自分で意志を持って「ここでこんな絵を撮ろう」っていうイメージで粘る。、、これは「撮らされてるんじゃなくて撮っているんだ。」と感じたんです。


梅原:そうですね。自分にしては粘りました。


高崎:今までの梅原作品のテイストは確かに継承しているんだけど、じっくり構えてただ偶然を待つんじゃなく、自分の意思でモチーフを引き寄せている気がした。ただね。。


梅原:ただ、、?


高崎:街中の写真と郊外で撮った写真では、全く別人級にレベルが違いすぎた。(笑)


梅原:すいません、まだまだです~。(笑)


高崎:田舎に行ったら前の梅原さんに戻っちゃった。(笑)土地との相性なのか、その時の気持ちなのか、わからないけど明らかに何かが作用してた。


梅原:その時の気持ちですかね。


高崎:でも、その違いを感じることで、自分にとっての写真作品が何なのか、また見えてきたんじゃないかな。良いことだと思うよ。


梅原:はい、自分でもその差はわかっています。


高崎:で、結局、富山展にはそのオランダ旅行の中から5点選出したんだよね。プリントもよく仕上がっていたと思います。


梅原:富山の方々はプリントや額装もレベル高いこと知ってましたから。気合い入れました。


高崎:トークイベントでも、しっかりお話しくださって、富山の方々にいい刺激になりましたよ。やっぱり自分の作品のことをちゃんと喋れるかどうかっていうのは、その作家が作品について考えが浅いか深いかが出ちゃいますからね。


梅原:そうですね。緊張しましたがちゃんと勤め上げられて良かったです。




高崎:メンバーやお客様とはお話しできましたか?


梅原:ええ、限られた時間でしたけど、メンバーはもちろん、お客様も積極的に話しかけてくださって沢山コメントをいただきました。一番印象的だったのはカルチェ(アンリ・カルチェ=ブ レッソン)っぽいねって言われたことですね。また、モノクロの仕上げに言及なさった方もいらして、富山は写真熱が高いんだなって思いました。


高崎:展示会場での滞在時間は短かったよね。


梅原:ええ、もっと長く居られたらよかったんですが他に予定を入れちゃって。


高崎:どうせ環水公園のスタバでしょ。(※世界一美しいスターバックスと称された富山市内の人気のスポット)


梅原:ええ、それもありますけど、(笑)せっかくだからと予定を詰め込んじゃって。まさかこんなに来館者や他の出展者ととコミュニケーションが取れる場だなんて思ってもいなかったんででも、こんなことならもっと早く来て在廊したらよかったと後悔しました。


高崎:梅原さんと僕が東京に戻った翌日に会場入りされた、もう一人の受講生招待作家の丹羽由美子さんに関しても、お客様やメンバーが会話したくって順番待ちの列ができてたそうですからね。。


梅原:Aboxとやま展に出展できたことは、本当に刺激になりましたね。さっきプリントクオリティが高いっていう話はしましたけど、ステートメントもしっかりしているし、全体のレベルが高いですよね。そして富山のお客様って、ささっと帰らないですよね。東京だと、さっと一周して帰るっていうパターンが多いけど、みなさんいろんな作家のところで立ち止まって、じっくり鑑賞し てくださるっていう。


高崎:一般の写真愛好家が中心の写真展なのに、そこまで時間をかけて観てくださるっていうのは、やっぱりいい作品展だったと言えるんでしょうね。美術館側からも集客できるグループだと認めてもらえているそうですよ。


【そして、これから】

高崎:さて、そこでいよいよ今度は Abox横浜校の写真展ですね。


梅原:ええ、そうなんですよ。よろしく願いします。


高崎:自分たちの展示も大切ですが今度は富山から招待する側ですね。、、。




梅原:そうですね。


高崎:とやま展ではメンバーが横浜校のメンバーを知らないんで僕の独断で決めさせてもらったけど、昨年の招待作家だった松龍先生をはじめ、丹羽さんや梅原さんはもちろん、わざわざ富山まで展示を見に行ってくださった受講生もいるし、みんなと相談して決めていこうかなって思ってます。梅原さん、実行委員長なんですよね。


梅原:ええ、いつの間にか選任されてました。(笑)


高崎:メンバーの全員協力体制が整ってるし、今から展示が楽しみですね。


梅原:あとは、内容です。(笑)


高崎:それはそうだね。。みなさん、結構いろんな写真展を開いているからその都度燃え尽きているわけでしょう。。そしてまた次に進むって、僕の場合は写真は仕事だから前のめりにやるしかないけど、みんなの熱量は高いですよね。さっきのコーヒーの話と同じでやっぱり「好き」という情熱はすごいんですね。何かAbox Photo Club展に向けて抱負はありますか?


梅原:まだまだAboxって知名度低いんですが、先生が二人もいて、いろんなことに気づかされたんですよ。受講者も全く違うジャンル、そして富山から写真家を招いて開催するわけですから、「ここにもこんなに面白い活動をしている人たちがいるんだ」って、認めさせたいですね。そしてこの人たちと一緒にやりたいって思ってもらいたいです。


高崎:ここまで通ってみてAboxって一言で言ったら、、どう?


梅原:苦しみながらも面白い!(笑)


高崎:そっか、じゃあもっと苦しんでもらおう(笑)。 なんだかAboxの宣伝みたいにまとめてくださったようですが、、、。でもさ、普通はお金払って習いに来ている人って、せっかく得た美味しい情報って人に教えたくない、って思うものじゃないですか?だからそう言ってくださると、嬉しいんです。


梅原:本当にそう思うんです。人数が増えすぎたら、言うこと変わるかもしれないですけど(笑)


高崎:(笑)では、個人的な今後の目標は?さっき作品を販売すること。飾ってもらえる作家になりたいっていうことでしたけど。僕の頭には梅原さんがカフェの経営をしながらその片隅でギャ ラリーも運営している姿が浮かぶんですけど(笑)


梅原:(笑)そうなったら最高ですけどね。コーヒー屋さんは儲からなさそうっていうことにも気づいちゃったんで。(笑)


高崎:じゃあ、時代の変化に合わせて仕事もしっかりやって、旅して写真撮って、販売できたらそのお金でまた旅に出てというルーティンかな。


梅原:そうなったら幸せですね。


高崎:じゃあ、Abox 展に向けてお互い頑張りましょう!


梅原:はい。よろしくお願いします。


高崎:今日はありがとうございました。




梅原 誠 Umehara Makoto

1977年東京生まれ。理系大学卒業。 2013年の転職を機に海外旅行に行き、海外の美しい街並みと景色に撮りたくなり、写真を始める。 メーカーにSE(システムエンジニア)として勤務の傍ら、2017年より写真家として活動する。

特に旅とコーヒーを愛し、旅先では必ず美味しいコーヒーを探す旅人。

個展 2017.3 「Ska vi fika」STARBUCKS COFFEE 玉川3丁目店 2017.11 「plus beaux villages」 fete cafe 2018.9 「Things change」STARBUCKS COFFEE 玉川3丁目店


interview Vol.4 商品撮影講座 第1期受講生 小林直剛さん インタビュー

interview Vol.3 写真家 中西敏貴 スペシャルインタビュー 後編

interview Vol.3 写真家 中西敏貴 スペシャルインタビュー 前編

interview Vol.2 写真家 高崎勉 スペシャルインタビュー 後編

interview Vol.2 写真家 高崎勉 スペシャルインタビュー 前編

interview Vol.1 写真家 松龍 スペシャルインタビュー

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