• t.takasaki

制作に行き詰まる時。


今年3月のブログでも触れたように、商品撮影講座のAdvancedコースは月2回のペースで受講生が静物写真の作品を撮っていく。講師の僕が現場でアドバイスしたり、時にはアシスタントとなってサポートして、1年間かけてポートフォリオ(作品ブック)を仕上げようという講座になっている。


その回でも触れたメンバーのTさんが、コースが始まって折り返し点を過ぎたあたりから順調だった制作が、その日のうちに着地しないことが次第に出てきた。


本人はナーバスになっているが、教える側としてはこれは想定内のこと。


クリエイター、アーティストに限らずスポーツ選手にだってスランプというのはある。しかしTさんのケースを僕はスランプだとは思っていない。

講座開始当初に、「あれを撮ろう」、「これを撮ろう」、と、胸を膨らませて受講し、それを消化していううちに、手元にあったネタが尽きてきただけのこと。


出し切ってしまったものは、またインプットしていけばいい。


かく言う僕も、大きな個展を終えて作品もアイデアもを出し切ってしまったところだけど、発表の術さえ知らずに足掻いていた時期を思い起こすと、作品のストックやアイデアがエンプティになって、先に無限の可能性があることの方が今はむしろ心地いい。

慌ただしい日々のせいで個展の総括さえできずにいるが、日々思うのは先のことばかり。

それが今の心境だ。


Tさんも今は辛いだろうが、きっと乗り越えられると僕は信じている。

そこで、一旦自由制作の手を止めてもらい、気分転換に課題作品を提案した。


クリエイターの通常の仕事というのは、クライアントからテーマを与えられる課題作品のようなもの。

それを擬似的にやってみることで、自分ではチョイスしなかったアイテム(被写体)やシーンに触れられ、新しい気づきがあると思った。

塾長が出したアングル指定の課題。

僕は絵が描けないので、ラフ代わりに簡単なアングル指定の画像を撮った。敢えて液体が空っぽでモノトーンの画像のみ。

このガラスの入れ物に、どのように、どのくらい中身が入って、どう光を演出するのかは本人次第。

そして迎えた1度目のチャレンジはあえなくタイムアウト。しかし、きっと次回は飛躍が期待できる。

そう言い切れるのは被写体としてのウイスキーと格闘した2時間に、Tさんの後ろ姿に大きな変化があったから。

撮る人の後ろ姿を見ていれば、迷っている人と、確信を持って光を動かしている人では明らかに違う。


そしてアトリエを後にするTさんの背中を見送った僕は、帰宅し夕方のベランダで一人グラスを傾けた。


被写体とゆったり向き合って芳醇な時間を過ごすことから作品のヒントが生まれることを、TさんにMessengerでアドバイスしたのだった。