予期せぬことに見舞われて、実家で過ごすことが多かった2ヶ月だった。
富山にいるときは写真講座や展示といった仕事があるので日中は外出していることが多いのだが、昼間からリビングでのんびり過ごすのはいつ以来だっただろう。
年老いた母には高所に上らないように言ってあるので、レースのカーテンを洗濯するための取り外し作業は必然、僕の仕事となる。
洗いたてのカーテン越しに差し込む光を見ていたら、自分のライティング(光の創り方、見つけ方)のベースはこの場所にあるのかもしれないと感じた。
富山県は3方を山に覆われ、北側が海なので山から日が昇り、山に沈むことになる。
日照率が低いため、この土地に転勤してきた人の中には「富山鬱」にかかる人がいるという話を聞いたことがある。
しかし、雪が降り積もった後の晴れた日には、他のどの季節にも味わうことのできない優しくて、しかし芯のある光に包まれる。
僕のアート作品には暗いトーンの写真が多いのは認めるが、広告写真では幅広いトーンで表現できる振れ幅を持っていると自負している。
それはこの部屋で四季折々の光を見て育ってきたことに起因しているのだろう。
コロナのせいもあって自室で作品制作をする人が増えてきたらしい。旅に行けなくなったことが理由として大きいだろうが、静物作品(Stilllife)を中心に活動してきた僕にとってはとても興味深い。
スナップや風景の作品は上手くに撮ることができるのに、静物にレンズを向けた途端、思い通りにいかないと感じる人も少なくないようだ。
Abox Photo Academyではコロナ前に特別講座として始めたStilllife講座が昨年秋からレギュラー講座として再スタートした。
光に迷った時には、自分が育ってきた環境の光を思い出してみるといいだろう。
それが仮にコンクリートジャングルのビルの谷間で見た一筋の光だったとしても、きっと共感してくれる人がいるはずだ。
そして未だ出会ったことの無い、夢の場所をイメージすること。
憧れの光に満ち溢れた空想の場所が、あなたの独創的な写真表現を生むかもしれない。
久しぶりの青空に誘われ、外に出てみた。
もしかしたら自分にとっての夢の場所は、元々暮らしていたこの場所だったのかもしれない。
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