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  • t.takasaki

「教えることになったきっかけ」

更新日:2020年10月12日

写真教室 Abox Photo Academy


 

久しぶりに弟子のYさんと仕事をした。


彼女は僕が独立して最初のアシスタントだったから、かれこれ20年近くの付き合いになる。

今は双子のママになったから仕事のペースを落としているようだけど、相変わらず売れっ子カメラマンで今回もYさんがお世話になっているデザインプロダクションから依頼された撮影だった。


僕の専属スタッフとして働いてもらっていたのはたったの1年間だったけど、その後もずっと一緒に仕事をしてきたので、久しぶりでも阿吽(あうん)の呼吸。

そんなYさんも僕の事務所に来たばかりの頃は右も左もわからない状態だった。仕事をしながらそんな当時のことを思い出していた。







Yさんが高崎事務所に通い出して1ヶ月くらい経ったある日、改まった口調で

「切り抜きの撮り方を教えてください!」と、頼んできた。


「切り抜き」というのは専門用語で、正確には「切り抜き写真」のこと。

Stilllife(静物写真)を専門でやっている僕にとっては「切り抜き商品写真」のことで、商品の輪郭がしっかり背景と分離され「切り抜きやすく」表現されている必要がある。

最近では「プロダクトカット」と呼ばれることも多い。


つまりYさんは僕の事務所に来て初めて「プロダクトカット」というものを知り、その撮り方に英文法や方程式のような「公式」があるのだと思い込んでいたのだ。

暫く呆気にとられていた僕は、

「!?、、え、毎日のように教えてるじゃん、、。」というような素っ頓狂な言葉を返した覚えがある。


僕がこの世界に入った頃は(確か入社1年目までは)土曜日も出勤という時代だった。

しかも撮影部隊と営業部隊が別だったのでカメラマンには毎日のように撮影があった。

その助手を3年続けてもカメラマンになれない人もいるという厳しい世界。特に切り抜き撮影は特殊なジャンルであるが上に、イメージカットのような華やかさも無い。


しかも報酬面においても評価されにくいのだが、彼女はその重要性をしっかり理解していたように思う。

そしてYさんは僕の元からたったの1年で商品撮影の基礎技術を習得して巣立っていった。


仕事中はあくまでお客様のための時間なので弟子に何かを教えている余裕なんてない。

Yさんは撮影の後にはその日の振り返りを欠かさず、撮影中にわからなかったことを理解するまで聞いてきた。

自分の師匠や先輩たちがそうしてくれたように、僕もとことん付き合った。


僕もアシスタントたちに教えることを通じ、身体でなんとなく吸収してきた技術を理論的に整理することができた。

その経験が、いまこうして撮影技術を講座で教える基盤になったことは間違いない。


仕事が完全にデジタル化になって久しいが、それ以来、僕には専属のアシスタントはいない。

だからこそワークショップを通じて、自分が培ってきたノウハウを誰かに伝え続けていきたと思うようになったのだろう。





「余裕があったら師匠のスクールでもう一度習いたい。」と、Yさんは時折言う。


僕でさえも撮影していると今でも毎日のように新しい発見がある。

それを感じ取って教え伝える内容も日々更新されているということが、彼女には分かっているのだろう。


実際はそんなことよりも僕が昔より角が取れて、優しく教えるようになったことが原因なのかもしれないけれど。(笑)



「商品撮影講座(Stepupコース)」新学期は10月よりスタートします。



商品撮影講座 講師(Abox塾長) 高崎 勉


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