写真教室 Abox Photo Academy
知人と会食した時のこと、ご子息 A君の話になった。
就職を視野に入れた大学進学の話になった時、「子供の頃から好きだった恐竜に関することがやりたい。」と打ち明けられたのだそう。
『「恐竜」って???』と知人は躊躇ったそうだけど、その情熱に気圧されてしまったらしい。
「じゃあ、研究の道に進むためには英語や他の教科もレベルアップしなきゃ。」ということで話は一旦まとまり、A君はいま勉学の道に勤しんでいるらしい。
それから暫くたったお盆休みに、家族で郊外のショッピングモールを訪れた。
僕はいつも真っ先に書店に向かうのだが、夏休みということもあって自由研究に関するコーナーがあり、書籍以外に実験道具なども売っている。
そこで1組の親子(パパと5歳くらいの男の子)がしゃがみこんで何かを手にしていた。
彼らが夢中で手にしていたのは恐竜のフィギュア。遠目から見てもリアルにできているのがよくわかる。
2人の邪魔をしたくないので本屋を一周した後でじっくり見に来ようと思い、その場を後にした。
本屋を物色しているうちに僕はそのことをすっかり忘れてしまって、別行動していた妻子と合流し、お茶をしたり雑貨を見たりして過ごした。
そしてもう一度その書店に通りかかった時、僕はさっきの恐竜のことを思い出し、再びその一画をのぞいてみようと思った。
すると、、あれから1時間以上経つというのにさっきの親子が未だ居たのだ。
どうやらティラノザウルスか、トリケラトプスを買うかで迷っていたらしい。(そのくらいの違いなら僕にもわかる。)結局、彼らは少し値段の高いティラノザウルスを選んでレジに向かった。
そのフィギュアを手にとってみると確かにリアルにできている。そしてお値段も子供の玩具としては高めで、どちらかというと大人向けに作られているんじゃないかと感じた。
しかし、どの恐竜にするか1時間以上も悩むなんて、情熱的だなと思った。子供はともかく、それに付き合うお父さんも立派なものだ。いや、もしかしたらお父さんの方が子供に付き合わせていたのかもしれない。
その男の子、もしかしたらそのフィギュアがきっかけで、将来恐竜の研究者になってA君の仲間になったりして、、。と思うと自然と頰が緩む。
その親子が選ばなかった方のトリケラトプスを持って僕はレジへと進んだ。
彼らが結果、どの道へ進もうとも、一度火が付いた情熱は彼らの人生にとって大きな尺度になることだろう。
僕自身にとっての情熱とは何だろう?と顧みながら、、、A君へ、そして会うことのないだろうあの親子に、この1枚を。
頭の中にあったイメージを形にするのに僕には珍しく2時間もかけてしまった。
側から見たら、本屋に1時間以上も座り込むことも、カメラの前で2時間被写体に対峙することも変わりはないのかもしれない。。
商品撮影講座 講師(Abox 塾長) 高崎 勉
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